第42話 初VRホラー開始
眼鏡先輩に言われた通りに【幸運】で振った数値は《29》だった。
珠音の出た目は《34》で、二人とも成功。
続いて【追跡】で振るんだったな。
もう一回、手元のダイスを掴んで転がした。
僕は《12》で珠音が《40》だったのに、僕の判定は失敗で珠音の判定は成功とでた。
――どういう事だろう。
僕と珠音で判定の値が違うってことか? 技能だって言ってたから僕のキャラと珠音のキャラで何かしらの違いがあるということだろう。
「我の方が高いのに成功か……、しかし何が分かるんじゃ?」
「なにか見えない? 僕は失敗してるからね」
廊下の床を照らしていたら、懐中電灯が手から落っこちて転がっていく。
「こりゃ、なにをしておるんじゃ」
「ごめんって、ワザとじゃないから。それに勝手に落ちたんだんだよ」
転がっている懐中電灯を追っていくと、靴の足跡が微かに見える。
「足跡だね」
「ほう、どうやらこのまま右に行ってるようじゃな」
僕には足跡があるだけで、方向までは分からない。
「片足だけしかないのに、良く解るね?」
「我にはそれだけじゃなく、通ったような感じまで見えるぞ。足跡が残っているのではなく、この場所を慌てて走った様な痕跡までな」
走った分の床に溜まった埃や砂が払われた痕跡が見えているらしい。
結構な違いが出るんだな、自分のキャラが分からないからどういう技能があるのかが分からない。
一つ一つしっかり覚えていった方が良さそうだ。
個人のキャラクター能力を教えてないのも、ワザと教えない様にしてるっぽいしね。
僕にも何か得意な技能があるとは思うんだけど。
それを調べるにもどういう技能があるのかが全然分からない。
珠音が見える痕跡をライトで追って行くよに歩いていく。
床にある窓ガラスが割れている場所に辿り着いた。
下を照らすと、ファレナちゃんが蹲っていた。
ライトで照らされて、一瞬だけ体が跳ねた様子だったけど震えていてこっちを見ない。
「やっほ~、助けに来たよ」
ワザと気の抜けた様な感じで、普通に話しかける様に呼びかける。
ゆっくりと顔を上げて、僕の顔を見ると涙目で嬉しそうに立ち上がった。
「へ? 助け……あぁぁ~、悠月ちゃ~ん」
さっきまでの絶望に打ちひしがれている表情から一変して、物凄いキラキラ目で僕へと両手を精一杯に伸ばしてくる。
「これこれ、我もおるぞ。大丈夫か?」
「珠音ちゃ~ん、会いたかったよ~。怖かったよ~」
窓を取り外して、床に寝そべって手を伸ばすとファレナちゃんがしっかりと僕の手を掴んでくれたので、頑張って引っ張りあげる。
その瞬間にダイスが勝手に転がってしまったが、今は無視だ。
「うわぁ~~ん、会いたかったよ」
実際に抱き着かれた訳じゃ無いけど。
VRで間近に可愛い子が抱き着いてくると、流石に緊張で体が硬直してしまう。
「お、落ち着いて、どうどう」
「酷いんだよ~、私と一緒に始めた先輩がドSでさ~」
『ふふふ、可愛い悲鳴は何よりも美味だったよ』
『奈々、相変わらず後輩を虐めるの好きな』
『げっ、陰湿腹黒メガネがなんで此処に居るのさ』
『そりゃあお前と同じく、サブキャラとして御呼ばれしたからだよ。後輩の暴走を止めるのも先輩の役目だろう』
『今日は大人しく弾いてやるかね。童は何時でも狙っているよ、新規生達は全員と仲良くなりたいしね』
メカに囲まれた小さな女の子が、妙に色っぽく妖艶に微笑み、舌なめずりをして僕とファレナちゃんを見てから消える。
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