第39話 初VRホラー開始



 眼鏡先輩の御蔭で恐怖心が吹っ飛んだ。


 ありがたいと思いながら、出てきた部屋を見ようとしたがドアが勝手に閉まってしまう。


「後戻りは……出来ないか」


 ドアが閉じる前に何かを間に挟めれば良かったんだけど、持っているモノは無い。


 いくら取っ手を回しても、押して見てもドアはビクともしない。


「チュートリアルとやらは終わりという事じゃな」


「はぁ~、こっからが本番か~」


 ホラーは苦手なんだって。


「怖いのかえ?」

「ふぅ、大丈夫。今回は悪霊が隣に居るしね」


 夜には珠音は寝てて役に立たなかったし、一人で居るのと変わらなかったら怖かったけど、少なくとも珠音が隣に居るだけでも心強い。


「我は怖いのじゃが」


 珠音をよく見ると、ブルブルと震えている。


「……台無しだな」


「いやいや、ここまでリアルだとは思わなかったのじゃ」


「ファレナちゃんって屋敷の奥に逃げ込んだんだよね」


「あぁそうじゃぞ……小さき者達が危ないと言っていた方じゃ」


 厄介な事になってないと良いんだけど。それは望み薄だよね。


 眼鏡先輩が発狂ロールとか言ってたけど、ファレナちゃんのは罰ゲーム的な感覚だよね。自分で体が動かせなくなる時があるなんて。


 それを考えると正気度を下げる行為は愚策だよね。


 自分の心拍数でも振られるって言ってたし、ガッチガチのホラーを体験させてくれなくていいんだよ。怖さが半端ないんだけど。


 まだエントランスは良いほうだろう、明るくて周りも良く見えるから。


 屋敷の奥へと続く道は、薄暗くて先が全然見通せない。


 自分の手の届く範囲がようやく見える程度だ。


「何か灯りなるモノがないと、ちと厳しいのう。流石にこのまま進みたくはないぞ」


「それは僕も同感」


 上がって来た右の通路にある9番以外、全てのドアに鍵が掛かっていた。


 ここに来て【聞き耳】判定を二人で失敗したけど、とにかく中を確かめようと室内を覗いたけど、部屋の中には家具一つ無く、絨毯も敷かれていない。


 本当にたたの空き部屋だった。


 押し入れにだってモノが入っていない。


「ここは外れじゃな」


「そうなると、左通路だけど……開いてるドアはあるのかな」


「ファレナのヤツは懐中電灯を持っておったっけ?」


「そこまで見てなかったな。物が一杯で見づらい位置に僕達は居たからね」


 乱雑に置かれた家具で塞がれた階段を二人で見る。


 きっとファレナちゃんも此処から降りようと、エントランスに来たんだろう。


 左右の通路から出てきていたら、僕等が気付かないはずないし。


 ……あれ? そうするとファレナちゃんはどっからスタートしたんだ? 僕等は屋敷の入り口から入ったけど。


「ほれ、何をボサッと考え込んでおる、早う行くぞ」


「あ、うん」


 エントランス側の13から奥へ順番に始まる部屋番号。


「先ずは、鍵の掛かってるドアから調べちゃおう」


「ふむ、了解じゃ」



 下の階とは違って、一番奥にある16番のドアに鍵が掛かっていた。



 他のドア三つには鍵が掛かっていない。



「入れる部屋は三つじゃぞ」

「あぁ~、やだやだ。早く終わらせたい」

「どれから行くのじゃ?」

「奥から調べる?」




 15番のドアの前に立って指さして言う。






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