第36話 初VRホラー開始
僕の姿が見えて、なとかつ話せるなら少し聞いてみようかな。
「ねぇ君達、ちょっと聞きたい事があるんだけど」
できるだけ小人達と視線を合わせる様に屈み、驚かせない様に注意して話しかける。
「ど、どうしたのじゃ悠月⁉ 何にも居らんところに話しかけて」
珠音には見えていないようだ。
「僕には見えてるんだけどね。多分あれだよ、強制聞き耳とかの失敗で見えないんじゃない」
「あぁアレか~、我も見てみたかったのじゃ」
初めはびくびくとして物陰に隠れていたが、何かコショコショ話し合ってから、数体が寄り添いながら僕の前に姿を現した。
「やぁ、初めまして。僕は悠月。こっちは珠音っていうの。よろしくね」
いまだに戸惑いながら、恐る恐ると僕へと手を伸ばしてくる。
ツンツンと突かれたり、ペタペタと触られるけど特に嫌な感じはしない。
やがて僕達に敵意が無いと分かったのか、続々と小さな子達が集まりだしてきた。
「なんじゃこ奴等は? さっきまで居らんかったよな」
「ずっとこの部屋には居たみたいだよ。珠音にも見えたってことは少しは信頼されたかな」
まだ安心しきった様子はないけれど、それでも近付いて僕等を観察しているようだ。
見えていなかった時の様に悪戯はしてこない様子だ。
『遊ぼうよ』
『ここなら安全』
『いつまでも遊んでられるよ』
敵意が無いと分かると、すぐに近付いてきて服をあっちこっち引っ張られる。
「えぇっと、ごめんね。二階に居る友達を助けに行かないと」
僕がそう言うと、ようやく警戒心が解け始めていたのに小人達は急に深刻そうな顔で僕達をみてくる。
『二階に行くの?』
『危ないよ?』
『二階は危険』
小さい子供が通せんぼするように小人達が入り口の前を塞ぐ様に並び始めた。
「これはほんに早うファレナを追った方が良さそうじゃな」
「みたいだね」
小人達の邪魔にあいながらも、室内の探索を始める。
『ほんとに行くの?』
『危険なのに?』
『行きたいの?』
「うん、どうしても行きたいんだ」
「友が居るからな、助けに行かねばならん」
小人達が僕らの顔をジッと見ていると、急に団子の様に集まって小声で何かの会議を始めだした、皆の意見をまとめるインテリ眼鏡な小人も居る。
どういうわけか小人専用のホワイトボードまで取り出して、学校の教室のように机を並べての会議だ。ちなみに意見をいう時は挙手してから発言するようだ。
しばらくして話がまとまったのか、裁判員が叩く木槌で場を大人しくさせる。
『二階に行けるのは鍵のかかった部屋から』
『奥の部屋はもっと危険』
『中庭は特に注意だよ』
『はいコレ、四番の部屋の鍵』
『これ以上の手助けはしない』
「ありがとう」
「この借りは何時か返すのじゃ」
心配そうに見ている小人達を背にして、部屋を出る。
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