第35話 初VRホラー開始



「この部屋は綺麗だね」

「綺麗すぎる気がするがの」

「特に何も無くって良かったと言うべきかな」

「知っとるぞ、それはフラグってヤツじゃろう」

「要らないよそんなフラ、ぐ⁉」


 勝手にコロコロとダイスが転がっていく音が室内に響く。


 【聞き耳】判定と出ている。


 僕が《19》で珠音は《68》と出て、僕だけが成功と表示された。


 開けたままにしていたドアがバタンッ――っと、勢いよくしまった。



『クスクス、あははは』

『驚いたか?』

『驚いた驚いた!』

『びくぅ~、ってなってたよ』



 珠音じゃない声が部屋中に響き渡る。


 今度は声までハッキリと聞こえる。


「キョロキョロとしてどうじたのじゃ?」

「なんか居るっぽいんだけど、声聞こえなかったの?」

「な~んも聞こえ取らんぞ?」


 なんで成功した僕が怖い思いをしなくちゃならないだよ。


 小さい子供が走り回るような足音も聞こえてくる。


 僕らの周りをクルクルと回る様に、走り回っている気がする。


 ヒソヒソと小声で話している声はそこらじゅうから聞こえるし、笑い声なんかは真後ろから聞こえたり、耳元で聞こえたりしている。


『は~いではお楽しみのSAN値チェックどうぞ』


 【正気度】と表示され、コロコロとダイスが転がっていく。


『……なぁ、お前は本当に何なん』


「いや、何と聞かれても」


 ダイスの目は《4》でクリティカルと出ている。


「コレってどうなるのじゃ?」


『特に何にも起きないな……あぁ、何にも起きない』


 何故かジト目で見つめられる。


 別に悪い事はしていないと思うんだけど、眼鏡先輩の思惑とは違ってたんだろうな。


『はぁ、ついでだしもう良いかな』


 パチンッと右手で指を鳴らすと、今まで姿の見えなかった奴等が徐々に姿を現す。


 小さい人型の妖精っぽい奴等が部屋中にいっぱい居た。


 相手も見られていると気付いた様子で、可愛らしく物陰に隠れようとしている。


 姿が見えなかった時は堂々と僕達の周りを飛び回ったり、騒いでいたのに。


「随分と恥ずかしがり屋な子達だね」

「お主には何がみえとるんじゃ? 我には何も見えんのじゃが」

「小人みたいなのがうじゃうじゃいるよ」


 さっきまで騒がしかった彼等は、すっかり大人しくなってしまっている。


 見た目は可愛らしいというよりも、小さく綺麗なお姉さんやお兄さんって感じだ。



「はふぅ、それはちょっと見てみたかったのじゃ」



「とにかく先ずは室内で使えるモノが無いかを調べようよ」




 小人達が僕の事を不思議そうに見ている。




 珠音は全く気付いていない様だけど、彼女の周りにも多くの小人達がいる。



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