第33話 初VRホラー開始



「先輩、この【正気度ロール】ってなんですか?」


『なにって……そのままの意味だな。お前らには一定数の正気度がある、コレが減ってくと面白い事になるからよ、どんどん減らしてこうぜ』


 ケラケラと笑いながら先輩が教えてくれる。


「どうなるかは教えて貰えないの?」


『簡単に言っちゃえば狂気に陥る……まぁ、なってからのお楽しみだな』


「成功か失敗かの値って教えて貰えないのかのう?」


 珠音の気になってたのか、まぁ気になるよね。


 最初からだけど幾つ以上・以下で成功か失敗というのを説明されないままだ。


『あぁ、教えませ~ん』


 両手で大きくバッテンを作りながら、舌をベーッとだして教えてくれない。


 やっぱりワザと教えないっぽいね。


『ちなみにだけどな、君達の心拍数が一定以上いくと勝手に【正気度ロール】として振って貰う事になるから注意するんだな』


 ダイスやコントローラーと紐で繋がってるリストバンドかな、心拍数を図ってるの。


 ほぇ~、ホラーでそこまでするかね。


 正気度とかって言ってるってこどは、減れば減るだけ個人に何か起きるって事だもんな。嫌な予感しかしないよ。


「ビックリするだけでも振る事があるってことだよね」


『ふふふ、減れば減るだけ成功値が下がるからな。どんどんと驚いてくれ』


「回復方法とかないのかえ?」


『教える訳がねぇな』


 ほぼ無しと言って良いかもしれない。


「とにかく次の部屋に行こう。早くファレナと合流した方が良さそう」


「そうじゃな」

『せいぜいガンバってくれ』


 少し早歩きで二番と書かれた部屋に行く。


 最初と同じく聞き耳をしてみる。


 どっちも《成功》と出るが、室内からは何も聞こえない。


「なんも聞こえんのう」


 音を立てないようドアを少しだけ開いて、室内を見てみる。


 特に人影もなく。綺麗な室内だ。


 今度は和室らしく、部屋の半分が畳で日本家具で揃えられている。


 畳側の中央に囲炉裏があって、火まで付いている。


「コレって煙はどっから抜けるのじゃ?」


「多分、あの上にある換気口でしょう」


「隣は洋風、この部屋は和風と変な屋敷じゃの」


「まぁまぁ、そう言わずに何かないか探そう」


 二人で室内のタンスやロッカーに押し入れと探してみるけど、特に何もない。


 目星で振ったところで……振ってみるか? そう言えば振って無いな。


「よっと、え~っと【目星】でダイスロール!」


 コロコロとダイスを転がした。

 ダイスの数は《36》で成功と表示された。


 すると今まで特に何も表示されていなかったモノにアイコンが浮かび上がる。


 僕の背と同じくらいのタンスに、二人で『持ち運びが可能』という字が出てきた。


「なるほどの、自ら振らぬと分からぬ事もあるんじゃな……しかしコレは意味あるのか?」


「分かんないけど、確かにコレだけ何にも物は入って無かったね」


「ふむ……とにかく次じゃな、この部屋もコレだけの様だしの」


 今度は少し注意しながら部屋を出る。


 しかし、さっきの部屋の様に勝手にダイスを振られる事も、物音が聞こえる事もない。


 ちょっと気になって部屋から出た後に、もう一度ドアを開けて室内を見回してみても、開けっ放しの引き出しや戸があるだけ。



「一番の部屋だけのようじゃの」



「みたいだね」



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