第31話 初VRホラー開始



 真っすぐに続く廊下。等間隔に並ぶ窓からは激しく雨がぶつかる音が響く。


「部屋の数が、一、ニ、三、四……五?」


 左側に並ぶドアは四つ、一番奥の正面のドアが一つ。


「なんで一番奥のドアだけ装飾がされてるんだろう?」

「とにかく手前から調べていくのじゃ」

「そうだね、部屋の番号も一って書いてあるし」


 一の部屋の前まで行って立ち止まる。


「えっと聞き耳をすれば良いのかな?」

「ノックでもしてみるか?」

「いや、先ずは【聞き耳】をしてみよう」

「了解なのじゃ」


 二人で一緒にドアに耳を当ててみる。


 すると独りでにダイスが転がりだした。


 僕のダイスが【54】で珠音は【72】と出た。


「わっ! なんでダイスが勝手に転がるの」


 いきなりの事でドアから離れて、ダイスをまじまじと見つめる。


「勝手に転がる仕組みなのようじゃな」


 珠音はツンツンとダイスを突いてから拾い上げて、また転がしたりして遊んでいる。


「なんで珠音は冷静にダイスを見れるの……触っても大丈夫なの?」


「問題ないようじゃぞ?」


「はぁ、こんなダイス持ってたくないんだけど」


 勝手に手元に戻って来ちゃうから、そう思ってても捨てられないんだけどね・


 手の中にダイスの硬い感触感じながらポケットにしまう。


 そんな僕をあざ笑ってか、何か妙に嬉しそうなテンションで眼鏡先輩が現れた。


『ふふふ、存分に怖がってくれ。悠月君は成功だが珠音ちゃんは失敗だ』


 ケラケラと笑う先輩を気味悪がりながらも、もう一度ドアに耳を当ててみる。


 部屋の中からは特に何の音も聞こえない。


「成功って出たけど、何にも聞こえない」


「なら誰も居ないんじゃないかの」


 ゆっくりとドアノブを回してみる。


「鍵は掛かってないみたい」


 珠音の方を見ると、お互いに目が合った。


 何も言わずにゆっくり開いたドアの隙間から、二人で部屋の中を覗く。


「……特に何もない、ね」


「そうじゃな……先にファレナが来たのかのう? 明かりが点きっ放しじゃぞ」


「良いじゃん、暗い部屋を探すなんて怖くてやだよ」


「確かに暗いと薄気味悪そうじゃな」


 外観は和風の建物なのに、この部屋の中は洋風な家具が多い。


「おぉ~、ちゃんと家具は開いたりできるぞ」


 手元を取っ手に当てて引っ張ると、それに合わせて棚の引き出しが引ける。


 全体的に衣服しか入ってない。


 上の方にある戸を開けてみても、何か入っている様子もなかった。


「この部屋は何にもないのう」


「こうしてると、泥棒みたいだよね」



「そう言われると、悪い事をしてる気になるから止めて欲しいのじゃ」



 ただ綺麗な洋室ってだけで、特に何にもなかった。


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