第29話 初VRホラー開始




 眼鏡先輩に教えてもらった【聞き耳】をしてみる事にした。


「僕は《23》だったよ」

「我は《71》なのじゃ」


 フムフムと言いながら顎に手を当てて、何かを確認している動作が見える。


 僕達から見ると手には何も持っていないのだけど。


 そう思っていると急に眼鏡先輩の手元に本が出現した。

『悠月君は《成功》でタマちゃんは《失敗》だね』


「ぬぅ我は失敗か」


「どう変わるんだろうね」


 屋敷の二階からだろう辺りだと思う。


 ドタドタと大きな足音と、ガラスが割れる様なカシャン!という様な音が聞こえてきた。


 流石に何処とは分からないけど、微かに聞こえたくらいだった。


「珠音、聞こえたか?」


「わふぅ? 何がじゃ?」


 どうやら珠音には聞こえていない様子だな。


「二階から音が聞こえたんだけど、足音とガラスが割れた様な音がね」


「我には何にも聞こえなかったのう」


『それが失敗と成功の違いだ』


 エントランスには階段があるから二階には行けそうだ。


 ただ、真っすぐと左右にも廊下が続いている。


「すぐに探しに行くなら階段を上っていく方が良いんだろうけど、どうする?」


「ふむ、どうしようかのう」


 珠音が中央に立って廊下を一つ一つ覗き込む様に見る。


 真っ赤な絨毯が三方向に延びている。


『悠月君とタマちゃん……一度ダイスを振って貰っても良いかい』


「え? はい」


「別に使う気はないのじゃ」

『ふふ、コレは強制的に振って貰うぞ』


 僕は《31》で珠音が《40》だった。


 そのダイスを何度もチラチラと見ながら舌打ちをした。


『さて、どうするのかね』


「このダイスは何のためのダイスだったのじゃ?」


『気にするな』


「いやいや、すっごく気になるんですけども」


『……そんなにきになるかね』


 なんかニヤニヤし始めた眼鏡先輩に嫌な予感しかしない。


「珠音、早く行こうか」


「そうじゃの。とにかく二階に行ってみるかの」


 特に何もなかったという事だろう。


 成功か失敗かも言われないから気持ち悪いけど。


『チッ、早く移動せよ』


 階段を上がっていくが。僕も珠音も階段途中の踊り場で足を止めた。


「コレでは先に進めんぞ」


「すっごい色んなものが積み上がってるけど、重そうな物まである」


 ベッドやタンスなどが乱雑に置かれて道を塞いでいる。


 近付いて色々と調べてみる事にした。


『ぬ? そのモノの山を調べるのか?』


「あ~、はいそうですね」


『では、どうぞ【目星】でダイスを振ってみると良いぞ』


「目星? え~っと《16》が出ましたけど」


『ふむ、成功か』


 面白くなさそうにしながら眼鏡先輩が拗ねた様に言う。


 飛び出した椅子や棒などを持ってみてもビクともしない。



《タンスの中身も入ったままで色々な服が飛び刺していたり、ベッドもボロボロだがその全ての布が綺麗な状態だった。

壊れたベッドやタンスが壊れた部分は、素人目にも新しいモノであるみたいだ》



 調べた位置に、なんかゲームでよく見る様な文字盤が出てきている。


 そこに全て書かれた居た事だ。


「あ~、悠月ちゃんにタマちゃん⁉ こんな所で何してるの!」


「迷い込んだ?」


「強引に連れて来られた感じかのう?」



『君達の意思で此処に来たよね、違うよね! 変な言い回しをしないでもらえるかな』




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