第28話 初VRホラー開始
光に包まれ、次に周りの景色が見えるようになった時には、さっき絵に描かれていた和風建築のお屋敷が目の前に広がっている。
「薄気味悪い場所じゃ」
「神社のボロボロとどっこいどっこいだろう」
「ここまで薄気味悪くないぞ」
「神社って分があるから、下手すりゃお前の所の方がヤバいかもしれないよ」
肝試しに言った時に本当に怖かったんだから。
『やぁやぁ、無事に着いたようだね』
小さい悪魔が羽を広げて飛んでいる。
「……先輩、つぶしてみて良いですか?」
『何言ってるの君は⁉』
「いえ、なんか周りをウロチョロと飛ばれると非常に鬱陶しいので、蚊の様に叩き潰したくなるんですよね」
『ワカッタもう周りを飛ばないから』
出てきた瞬間に蚊のように飛び回るもんだから、反射的に叩き潰しそうになった。
目の前で留まった瞬間に両手を広げ、叩き潰す準備までしていた。
『周りを見回していたから、少しヒントをやろうと思って出てきたんだぜ』
「ヒント?」
「それならそうと言えば良いではないか?」
『バカ野郎、それじゃあゲームとして面白くないだろうが』
先輩がポケットに手を突っ込んで、何かをゴソゴソと探って取り出した。
二つの10面ダイスだった。
『そいつで【目星】探索として振ると良いい』
珠音と見合ってから、二人で頷き、一緒に振る事にする。
「えっと……ダイスロール」
『ダイスロールじゃ!』
僕と珠音が転がしたダイスが跳ねる。
珠音の出目が【16】とでた。
僕の出目が【66】になった。
『ふむ、悠月君がギリギリ成功だね。じゃあこのくらいだろうな』
悪魔姿の先輩が指をならすと、今までただの景色しか見えなかったのに、少し変わって見えてくる部分があった。
「ぬ? 地面が光っとるな」
僕も珠音と一緒に光って見える地面に近付いてみる。
「足跡だね」
『ちなみにだ、出目次第では違った情報が見れるぞ』
「悠月よ、コレは最近の足跡みたいだぞ、時間的には丁度我らがゲームを始めたくらい」
「え? 僕はそんなことは分かんないんだけど」
『それが出目による違いという所だろう』
たしかさっき僕はギリギリ成功と言われていたな。
危なく失敗だったら、そもそもこの光って見える足跡も見逃していたんだろうな。
逆に良い数字だったら、得られる情報も多い訳だ。
「やっぱり屋敷に向かってるよね」
「そうじゃのう。此処に来る前に見た絵では居るのは多分、ソフィアじゃろうな」
そういえば屋敷の中で逃げ回っていたように見えたな。
他にも誰か居た感じだったけど、見えたのはソフィアちゃんだけだったし、此処に全員が居る可能性は低いんだろうな。
「足跡ってコレだけだよね」
辺りをよく確認して見ても、ひとり分の足跡しか見つからなかった。
足跡は真っすぐに屋敷の入り口を目指して続いている。
「このタイミングで、雨まで降ってきたぞ」
「仕方ないか、行こう」
駆け足で屋敷の玄関へと向かう。
『けけ、頑張れよ』
珠音同様にちっちゃな先輩僕達の後を追ってくる。
「……すいませ~ん」
取りあえずノックをしてみるが、反応が返ってくることはない、
「誰も出てこんな」
取っ手を回してドアを弾いて見る。
「鍵は掛かってないみたい」
「不用心じゃのう」
『此処でワンポイントアドバイスをしてやろう』
小さいからで精一杯に胸を張って偉そうにしている。
「なに?」
「はよう教えて欲しいのじゃ」
『こういう扉の前や、壁の向こうなど、先が分からない時は【聞き耳】をすると良いぞ。もちろんダイスは振って貰うがな』
「さっきの【目星】って言うのと同じって事で良いですか?」
『うむ、良いぞ』
「そう言えば、【目星】って何なんじゃ? さっきのから見て大体の想像が出来るがの」
『簡単に言ってしまえば、視覚情報で手掛かりを見つける技能と言った感じだろう。ちなみにさっき珠音ちゃんが得た情報は実際には別の技能が混じってたりもすることがあるな、実際に足跡を追ってきたが、次からは【追跡】という技能で振らないと足跡を辿ってくることは出来ないと思いなさい』
「なにやら色々とややこしいのじゃ」
「そだね、一つ一つ覚えてくしかないんじゃないかな?」
『取りあえず【聞き耳】で振ってみるかい?』
「いま? もう開けちゃってるけど?」
『なにも見えないからって振るだけじゃない、【聞き耳】をすれば君の友達がいる場所も、もしかしたら方角くらいは分かるかもしれないよ』
「なるほどのう」
「そういう使い方も出来るんですね」
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