第23話 其々の初実況:ファレナ
==【視点:ファレナ】==
二期生の先輩に連れられて、其々の個室へと連行された。
「さぁ続いて始まりますのは~、ファレナちゃんの謎解きホラーです」
「続いてないよね。殆ど一緒のタイミングだよね。みんなどこ行ったの⁉」
確かに順番に配信しているけど、誤差じゃない。
殆ど同時配信だよ。
皆で一緒に「よ~いどん」って個人通話で言ってたの聞いてたからね。
「はいそのと~り、今回は二窓三窓して頂いてね。動画は残りますので後で其々の子を確認してくれてもオーケーですよ」
「順々にやっていく配信じゃなかったの⁉」
「順番に配信してますよ?」
「嘘だよね! ほとんど同時だよね、奈々先輩⁉」
魔道工学士というキャラだけあって、機械の使い方が凄く上手い先輩だ。
カラフル社内で一番の低身長なチビッ子な女性キャラでもある。
片手でタイピングしながら、配信環境の調整をし終えていく。
音量やら画質を見て、そのつど良さそうな設定に切り替えて最終調整を配信しながら終えていく。
「やはり最初のホラー配信は其々の特徴を捉えて欲しいと、そういう上からの命令でしてね。ならばと我々二期生がお手伝いしましょうと出向いて来たまでです」
ニコニコと微笑みながら、そんな事を言う。
悪戯好きの笑みが何とも恐ろしい。
「其々の特徴って……、苦手分野を宛がってるとか言わないですよね」
「ふっ、勘の良いガキは嫌いじゃないよ」
口角がすっごく上がってるよ。なんでそんなにウキウキな表情なの先輩。
「うそ~⁉ やめましょう先輩。ダメだって~」
両腕をパタパタ動かして全力で抵抗するけど、この先輩には意味が無いらしい。
「大丈夫だいじょうぶ。怖くないよ~」
むしろ逆効果で、更に奈々先輩が喜ぶだけだった。
「怖くないならホラーって付かないでしょう」
言ってる事が可笑しいとツッコミを入れる。
「童は怖くなかったぞい」
子供っぽく唇を尖らせながら、先輩の手は止まらない。
「先輩はホラー耐性MAXの変態サイコパスじゃないですか」
「ほう、先輩に何という事をいうかね」
その言葉を待っていたと言わんばかりに、食いつくように迫ってきた。
「はっ! 違うんです。ごめんなさい許してください」
「あぁ許すとも。許す条件としてコレをやりなさい」
しまったと気付いた時に既に奈々先輩のペースに巻き込まれていく。
「い~や~だ~、せめて誰かと一緒にやらせてくださいよ~」
「それは駄目であ~る。さぁ、恐怖の館へ行ってらっしゃい」
タイトル画面が映し出されて、和風建築の建物が目の前に見える。
集落っぽい雰囲気の家々が周りにポツポツと建っている。
「なんで色っぽく言うんですかね。変な色気ださないでくださいよ」
「お主までも童に色気が無いというか……よし、良いだろう、一緒にやってあげるよ」
「えっ! 本当ですか」
一緒にやってくれるという言葉に、思わず喜んでしまった。
「うん、本当ほんとう~。お互いに一緒に動かそうね~」
「一緒に動かす? なにを言って……まさかっ⁉」
「なに、選択時にもしかしたら手が滑ってしまって、お主が意図しない選択を選んでしまっても仕方がないだろう」
「ドSですか!」
この人絶対に私で弄ぶ気満々だよ。
「うん? 何を言っている。童はMじゃぞ。ミニマムじゃ」
「違うよね、そういう意味じゃないって解ってますよね」
「さぁさぁやろうではないか!」
私が何も操作してないのに、勝手に物語がスタートしている。
「うわぁ~、勝手にスタートをしないでくださいよ~」
「ほらほら、お主が進まねば物語が進行しないぞ」
「待って待って、ホントに待ってくださいよ」
「以外にも綺麗な家じゃないか」
「何処が⁉ ボロボロだよ! 床とかギシギシ鳴ってるからね」
「お? 意外にも童も動かせるのか」
「いやほんっとダメですって、勝手に前に進ませないでください⁉」
「何々、鍵穴からのぞくのか? 覗くかい?」
「覗きませんよっ⁉ す、進まないでっ! 戻るの、逃げるの~ふぁうっ! いまカチャって音が鳴りませんでした⁉」
「なに、ならそっちを調べに行かねばな」
「行かないでくださいよ⁉ 見せないで、ちょっと待ってちょっとまって」
「コレはアイテムじゃないか?」
「そ、そうみたいですね。って、なんで鍵穴を覗こうとしてるんですか⁉」
「アイテムは調べんのか?」
「調べますから」
「なるほどの~、「はい」か「いいえ」で答えるなら「はい」で知りたいだろう」
「何してるんです⁉ その選択肢は覗くかって選択肢でしょう」
「ほれほれ、調べないともっと怖い思いをするかもしれないぞ~」
「いっ! だ、誰もいな――ぎゃ~~⁉ いゃっ! ちょ! 出して⁉」
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