第22話 其々の初実況:天原栞
==【視点:天原栞】==
ついに始まったホラーゲーム実況が……よりによって苦手なジャンルを初めにやらされるなんてね。ツイてないというか、スタッフさん達の悪意を感じる。
「ねぇ、やっぱり皆で楽しむパーティーゲームにしません」
紬ちゃんじゃないけど、初めてのゲーム配信なら別にホラーじゃなくても良くないだろうか、紬ちゃんと仲良くなる為にパーティーゲームとかで良い気がする。
「しませんにゃ~」
そして今日の進行役として大先輩の二又猫の女の子。フタバ先輩が駆け付けてくれた。
フタバ先輩自身はホラー系が大の苦手ジャンルだというのに、人が怖がっている姿を見るのは好きという性格をしている。
「ほら私達ってまだデビューして一週間も経ってませんよ。親睦を深めるためにも、ここは普通のゲームをする方が宜しいかと進言致します」
今の私はスタッフさんの手も借りてVR装備を身に着けている。
「ダメですね~」
フタバ先輩はニヤニヤとしながら、すぐに拒否という感じで否定された。
「なんで先輩が居るんですかね?」
「後輩ちゃんの活躍を見に来たよ」
絶対に嘘だ。楽しむ為に来たが正解だろう。
「一緒にやりませ――」
「やりませんにゃ~」
食い気味にプレイを拒絶されてしまう。
「前にフタバ先輩がこのホラーゲームをしてたのを拝見させて頂きましたし、教えて頂けると私はとても嬉しいのですが――」
前にフタバ先輩がプレイしていた時は驚き過ぎて、過呼吸気味になっていたのを覚えている。
猫の様に飛び退る事もしばしあった。
そう、内容は知っている……前半だけ。
後は怖くて速攻でブラウザーバックだ。だからどんなゲームかは知っている。
「さぁ~、サクッといってみよう~。見てたんなら、ある程度の事は知ってるんでしょう」
ゲームの雰囲気だけなの、それ以上は知らないんです。
「先輩ッ‼ まって、まだ心の準備がひっ⁉」
今まで真っ暗だった目の前が、急に室内の画像が映る。しかも薄暗い室内という。
「可愛らしい悲鳴だにゃ~」
声だけで、もう悪戯猫の様に笑っているのが想像出来た。
「タイトルで脅かしとか要らないんですよぉ」
ロゴが急に崩れ落ちて手元で灰になって飛んで行く。
室内だというのにさっきから妙な音が耳元で聞こえる。
「ちなみにね~、そのタイトルでずっと留まっているとね~」
「と、留まっていると?」
「後ろの絵がね~」
「絵って? う、後ろ? わぁあぁ‼」
止めとけば良いのに、先輩のいう事が気になって気になって。
つい後ろを振り返ってしまった。
絵から急に蔭が飛び出してきて、私の体をすり抜けていく。
「VRらしくちゃんと室内って感じで色々と見れます。ボクも驚かされたな~、本当に怖いんだよね。連続で手とか足とかの跡が浮き出てくるの」
ダンダンと足音が私の周りを駆け回ったかと思えば、すぐに違う場所から音がする。
ビデオデッキが勝手に動いたり、テレビが勝手についたりとしている。
「ひ~、はっはっはっ……びっくりぃ‼ ぁ~う」
「早く始めた方が良いよ~」
「はぃ、始めます、ひっうぅ」
すぐにスタートと書かれた文字に触れに行く。
一瞬、どこにスタートがあるのか分からなかったけど。文字を見かけた場所に飛びつく様に駆け出して、何度もスタートを連打していた。
「ほら大丈夫だか、明るい部屋だよ~」
呑気な先輩の声が聞こえ、少しだけ落ち着いた。
「はぁはぁ。タイトルはこういう部屋で良いんですよ。暗い部屋とかから始めなくても、携帯電話を取るんですね……よっ、開いて電話かけるの? 誰に?」
携帯電話を操作していると、日記を見つけた。
「あぁ色々と弄れるんですね」
どうして皆一緒にプレイじゃないんでしょう。
というか、みんなは今どこに要るんでしょうか? なんか別々の場所へと其々の先輩に引っ張られて散らされてしまいましたけど。
「わぁーわっ! もぅやだ」
急に手元の携帯電話が鳴り始めた。しかも不安を掻き立てるような着信音。
少し別の事を考えていたせいで、更にビックリした。
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