第21話 ホラーゲームパニック




 朝からひどい目にあって、ようやく皆が落ち着いてきた。


 僕自身はまだ頬が熱い気がするけどね。まったく皆は悪ノリが過ぎるんだから。


 第一に僕のを見たって何にも徳は無いでしょうに。


 最終的には「眼福、眼福」とか「目の保養です」とか訳の分からない事を言うしさ。


「今日のVRホラーってどんな無い様だと思いますか?」


 会話も収まって少しの沈黙とゆったりとした時間が流れ始めた時に、楓さんが徐に今日の活動内容の話しを振ってきた。


「和ホラーじゃなければ何でも良いかな~」


 ソフィアちゃんは苦笑いしながら、少し上を見上げて言う。


「気持ち悪いのが出てこなきゃ何でも良いけどね」


 同じく何かを思い浮かべた表所で晶さんも続く。


「あれ、皆はホラーに強いんじゃないの?」


 全員がホラー系に強いのかと思ってたんだけど、違うのか。


「そんな訳ないじゃん。この中でホラーに強いのは晶だけだよ~。ホラーがある程度は出来て良い反応をするメンバーが選ばれてるんだって。その点じゃあ紬ちゃんは断トツだね」


 確かに、そう言われればそうだよね。なんの反応もしないんじゃあ見る側としては面白さが半減してしまうかも。


 驚かない分は心強いから、安心してホラー系でも見れるというのもあるけど。


 僕はどっちかというと驚かない人の方が良いな……後ろに隠れて見れる感じがして。


 怖いのは怖いんだけどね。頼もしい人が居るだけでも一緒に見れる。


「ちなみにですが、私はスプラッタ系や驚かしてくるモノが苦手ですね」


 楓さんはイメージ通りの感じだね。


「アタシは幼虫とか虫がダメだ。それ以外なら別に怖がることは無いかな。ビックリはするけど、そんだけだな」


 意外にも虫系等がダメなんだ。


 僕は逆に気にしないけどね。


 そう聞くと、良い感じに皆がばらけてるのかな。


「夜に紬ちゃんが体験したヤツってね。私達がオーディションを受けた時のヤツなんだよ。色々とアレンジは加えてたけど」


「本来なら部屋に来るまでにも色んな仕掛けがあって、それで試された感じです」


「AR技術の無駄遣いだったよな~、遊園地のホラー館で使われてる以上のヤツを皆がお見舞いされてったという感じなんよ」


「つまり、皆で僕の事を試した的な感じ?」


「それは建前ですね。私達が怖い思いをしているのに一人だけ受けて居ないのは不公平でしょう、ですから皆で脅かしてみたかったというのが本音でしょうか」


 自分達が受けた事がある事を、バージョンアップさせて僕に試さないでほしいです。


 本当に怖かったんだから。


「こそこそしてる紬ちゃんは可愛かったよ」


 何処から見られてたんだろう。


「寝ぼけていた事が勿体無く思えてくるのう。我も参加参加したかったぞ」


 悔しそうに僕を見るんじゃないよ、そもそもお前が寝ていたせいで一人で夜に屋敷を動き回らなきゃいけなかったんだからな。


「気絶するとは思わなかったけどな。大丈夫かよ今日のホラーは」


「珠音も居るし、多分大丈夫、だと思う」


 自身は全く無いけどね。すぐ近くに誰かいるならどうとでもなる気がする。


「VRゲーム自体はやったことあるの?」


「いや、ないです」


「珠音様は確実にないですよね」


『ないぞ~』


 珠音はすぐさま携帯を使って返事をする。


「もう使いこなしてるな携帯端末」


 しかも文字を打つのが早い。


「珠音ちゃん用の携帯を用意しておいた方が良いね」


「それでしたら今日の夜にでも届くはずですよ。昨日の寝る前に頼んでおきました」


「珠音が操作してる時って皆にはどう見えてるんですか? 浮いて見えるとか?」


 ふと気になったので聞いてみる事にした。


 僕からすれば普通に珠音がモノを弄っている程度にしか見えないんだけど。


 他の人から見ると、どう映って見えるんだろう。


「言われてみるとそうだのう、どう見えて居るのかはすっごく気になるのう」


 珠音自身も、そういう事に関しては分からない事が多いらしい。


「何て言うんだろうな、そこにモノがあるって意識が無い感じってやつか?」


「急に現れたというよりも、そこにあったモノに気付かなかったというイメージですね」


 二人が考え込みながら、何とか言葉にしてくれる。


 そんな中でソフィアちゃんがハッとした表情で僕を見てくる。


「マイクの機材とかは使えるのは確認してるんだよね? VRメットは大丈夫なの?」


 ……どうなんだろう。使えるとは思うけど。


「紬、やってみよう。第一にだ我はゲームというモノすらやった事がないのだ。試験も兼ねてやってみる事には我は賛成じゃぞ」


 ただ単に遊びだけの子供にしか見えないぞ珠音さんよぉ。


「えええ擦り寄って来るな、わかったからさ。確かに僕も気になるしやってみよう」


 どうしてもやりたいのか、服を軽く何度も引っ張られる。


「ついでに紬も慣れておけよ。VRメットとは言えな、慣れていないとゴーグル部分を触っちまう事も多いからな」


「ゴーグル部分?」


「えぇ、その部分を弄ってしまうとエラーで止まる事もあるので、慣れは必要かと」


「昔と違ってゴーグル部分の重さは感じないけどね」


 なるほど、そういう事なら僕も含めて今のうちから試しておかないとだね。


「後は心配なのは酔いですかね」


「此処に居る皆は3D酔いとかってしないメンバーですから」


「特に今まで生きてきて酔った事って一度もないんだよね」


「まぁ、とにかくやってみようぜ」


「そうですね、此処に機材は揃ってるんですから丁度良いですか」


「ゲーム何にする?」


「手始めにダンスパーティーやろうぜ」



「じゃあその後に戦闘機のゲームで3D酔いを見ますか」




「楽しみじゃの、ゲームゲーム」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る