第12話 呪われた新人ちゃん



 手短に自己紹介をしてから、珠音との出会いと経緯を軽く説明した。


「なるほどね~、事情は分かったよ」


 神らしい事は何も出来ない珠音だが、神社から出たら姿が消えたり宙に浮いて泳いで見せたりと、色々な事をしてようやく信じて貰えた。


 多分、信じて貰えたと思う。


 僕からすれば、まだ神様っていうよりも悪霊と言う方がしっくりくるんだけどね。


「一つ質問です。私が援助した場合はどうなるのでしょうか?」


 楓さんが少し遠慮がちに手を上げながら言う。


「問題はないが、あまり意味は無いと思うぞ」


 腕組みをしながらちょっと考えた珠音は、無情にもそう言って僕を見る。


「どういうことだ? 綺麗になれば人も来るんじゃない?」


 晶さんの言葉に僕も頷きながら珠音を見返した。


「神罰をなめてもらっては困る、それだけでどうにでもなるなら、紬の両親が立て替えれば済む話だ。神罰を受けた者が試練を乗り越えねば解けぬし、神の力が働き、またすぐにこんな風に廃れてしまうのが落ちじゃな」


 そういうって事は、父さんと母さんも何かしら聞いた後って事かな、僕が気絶している間に妙に珠音と仲良くなっていたし。


「そういう事は僕にも事前に教えて欲しかったんだけど」


「紬に話しても、どうせ遠慮して自分で何とかしますとか言い出しそうだしのう」


 チラッと僕を見ると、嫌に温かい目で見ながらそうんな事を言われた。


「うん、なんか簡単に想像できちゃうね」


 皆が「あ~、たしかに」という呟きと共に頷いていた。……解せん。僕は一体全体、皆にどういう感じで見られているのか非常に気になるところだ。


 この三人だってまだあって半日も経っていないのにさ。


「安易な協力は逆効果になる可能性もあるって事ですね」


 楓さんがため息を漏らしながら、肩を落として言う。


「まぁ綺麗にしてくれるのは嬉しいがのう」


「呪いが解けないんじゃ意味ないよ」


 僕は話しを聞きながらがっくりと気落ちして、地面にしゃがみ込み指先でのの字を描いて、乾いた笑いをあげる。


「それにしても、このお茶は美味しいですね」


「以外にもスッキリした感じで飲めるんだな」


「うんうんのど越しスッキリと飲めちゃうね」


 無理やりに話題を逸らそうという感じで、急に水筒の中身を褒めだした。


「気に入ってくれたなら良かったよ」


 僕もいつまでもこんなんじゃ空気が悪くなっちゃうよな。


 男教本にはこういう時こそ、しっかりと前を向けと書いてあったんだ。しっかりしないと。


「所でさ~、紬ちゃんって何処に住んでるの?」


 ソフィアちゃんが僕の顔を覗き込みながら聞いて来た。


 何て言うか、ジッと人の目を見て話す子なのかな。


「この近くですよ、此処に階段で上って来る前の道沿いにある家です」


「あのおっきなお屋敷⁉」


 たぶん、お隣の幼馴染である、果歩姉ぇの家だろう。


「ん? 屋敷じゃないよ? 唯の一軒家だし、庭は広いけど」


 ちょっと古いが立派な一軒家だ。昔からある家だからか庭とか無駄に広くあるけど。


「反対側にあった家じゃないか? アタシの家と似た感じの家だったな」


「私達の引っ越し先と程よい距離ですね」


「そうだね~、何時でも遊びに行けるし、泊に来れる距離だね」


 皆が頷いているのを見て慌てて割って入る。


「いやいや、お泊りは流石にダメだよ」

「おい、我はどうなんじゃ我は」


 何を言ってるんだこの子達は、男がおいそれと女の子の家に一泊なんてダメだ。


 珠音は別だから、どうでも良いとしても。


「……あぁ、そうか男の子だったな」

「あ、ごめん忘れてた」


「今は巫女服を着とるが? それは言いのかのう」


 この二人は、僕をちゃんと男として見て欲しい…………あぁ、いま巫女服だったね。


「そうですね、すっかり忘れていました」


 楓さん? あの、妙に間があったのと、言い方が凄く白々しい感じなんですがね。


「あ~、引っ越してきたばっかりなら色々と案内しましょうか?」


 とにかく泊とかって話はどっかに捨てといて、別の話題に切り替えよう。


「良いねイイね。お願いしても良いかな。まだ右も左も分からないからさ」


「そうだな、それにもっと交流を深めないとダメそうだしな」


 うぅ、話題は変わったけど、違う意味で問題だよ。


「えぇ、私達は同期で同時にデビューした者同士です。ある程度は砕けた喋り方でかまいませんよ。もっと仲良くなりましょう」


「そう言うしお……じゃない、えっと楓さんも敬語で喋ってるじゃないですか」


 僕がそういうと惚けた顔をして、ニッコリと微笑みだした。


「私のはもう癖みたいなモノですから、徐々に皆さんとの会話で学んでいきます」


 含みのある言い方が、物凄い気になったけどあえて無視する。


「とにかく、いっかい僕の家に行きますよ」


 こういう時は、逃げるに限る。



  ★☆★☆★☆★☆




「ちょっと見ない間に、色々と面倒な人達が増えたりしてるんですけど……どういう事かしら? ねぇ、説明をして貰えるかしら」


「い、いや。アイツ等の事は知らねぇって」


「こんな事になってるのは、流石に予想外?」


「そうそう、誰よあの可愛い子達。この辺じゃ見ない子達だよ」




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