第6話 呪われた新人ちゃん



 四人の先輩達が一生懸命に司会進行をしていく。


『特殊と言うのは、主な活動をユニットでTRPG・VRホラーゲームをやっていく感じになります。アイドルも兼ねていますが、基本はゲームが主体です』


 長い白銀の髪をした、モデル体型なちょっと妖艶なお姉さま。キャラ的には電脳戦士の紫といった感じの服装をしている。


『最近はVR技術も進んできましたからね。体感VRゲームのTRPGホラーをしていく感じです。動画でもARを駆使して拡張現実な視点でお楽しみ頂ける様に、AR専用の研究技術スタッフ協力が全面協力の下で皆様に楽しんでいたけます』


 どこかのお嬢様っぽい見た目の金髪の長い髪に、ふにゃりと柔らかい顔。

 うん、女装したお父さんはきっと、あんな感じだろう。


『我らの後輩、その一人目を召喚しよう』


 魔法騎士といった風貌の男の人が地面に魔法陣を描いていく。


『画面越しでも楽しめるけど、事前報告した通り、ARギア盤がある人は準備しといてね~』


 最後の一人は、ライオンをイメージした女の子だ。スラッとした身体つきである。


『最初から立体ガワがあるって良いなぁ~』


 父さんがぼついているが、周りは敢えて無視している様子だ。


『よし、準備完了⁉ では、一人目の子どうぞ~』


 白銀のお姉さまが高らかに言う。


「が、がんばってね栞ちゃん」


「ほうほう~、コレはまた面白いものじゃのぅ、どうなっとるんだ?」


 僕達の前には、扉の様な枠が広がっていて、この先へと出て行けば全身が映し出される。


 応援をした僕に驚いた顔をし、ちょっと噴き出し笑顔で歩き出した。


『ぷっ、ふふ。こほん、失礼しました。天原栞と申します。生まれた星は違いますが、これから皆様と楽しい時間を過ごせたらと思っています。以後、よろしくお願いいたします』


 少し恥ずかしそうに咳払いしてから、背筋を綺麗に伸ばしてお辞儀をする。


 その一挙一動が綺麗な動きだった。


『こりゃまた、随分と綺麗な子が来たね~』


 父さんがライオンの子を見て、からかうように言う。


『胸まで、デカい……大和撫子ってこじゃん。ガルル』


『はいはい、後輩に嫉妬しないで』


 これ以上脱線しないようにか、魔法騎士の男の人が続けて呼ぶ。


『続いての子、カモンッ!』


「い、いってらっしゃい。がんばってね」


 ファレナが何かハイタッチをして出て行こうとしたが、するっと抜けてその勢いのまま舞台へと飛び出していった。


『は~いっよっとっと。みんな~、ファレナで~す。是非とも覚えてといてよね、海からきたクジラ族でね~……人間の間では、アレ? 何クジラだっけ忘れちゃったけど、まぁそんな事は知っても知らなくても生きていけるから、気にしない。って訳で、みんな、よろ~』


 常に明るく、元気に挨拶をする。


『きっと海から飛び出してきた影響で、記憶が飛んだのね~、可哀そうに』


 すぐにお父さんがフォローに入った。


 父さん、家でも何時もそれぐらいの切れが欲しいと思うのですが、ダメですかね。


『栞ちゃん、しっかり教育は任せたよ。ねぇ……なに、あの足、めっちゃ綺麗じゃん』


 恨めしそうにみるライオンの女の子を、白銀の髪のお姉さまが宥めている。


『ふふ、はい。承りました』


 栞ちゃんもリラックスしているのか、楽しそうに返事を返している。


『何と言うか、また破天荒な奴が増えたな。まぁ、悪魔的なタイプじゃないだけ、マシか?』


『ではでは、続いてどうぞ~』


 父さんが次の子を呼ぶ。


「あの、えっと、ふぁ、ファイト~」


『くくっ、大丈夫だよ、皆で待っている。一人じゃないんだ、深呼吸をして落ち着け』


 順番が迫るにつれて震えが止まらなくなっていた僕の頭を、優しく撫でてくれる。


 まぁ、映像だから感覚は無いんだけど。


「何と言うか、本当に性別が逆転してるんじゃないかって思うぞ」


「う、五月蠅いなぁ」


 本当に珠音は僕の心を抉ってよね。もう少しウルラさんを見習えよ。


『よっと……ふむ、意外とスッキリ見えるモノだな。おっとすまない。私はウルラと言う。ハンター家業をして育ってきたからな。こっちの常識には疎い、至らない事も多いだろうが、精一杯に皆を引っ張っていけるよう頑張るつもりだ、よろしく頼むよ』


 はぇ~、挨拶もキリっとしてカッコイイ。


『どこぞの騎士よりも、断然にカッコイイ感じの女の子が来ましたね~』


 父さんが茶化すように魔法騎士を見て言う。


『うちの騎士団に欲しいくらいだ。むしろ交換してくれ』


『あぁ、男性よりも女子にモテそうな子だね……居乳は滅びろよ。ガルル』


 あのライオンの子は胸の大きな子全員に恨みがあるのだろうか? 凄い目で見てるよ。


『多分、噛みついたらお前が狩れるんじゃないか?』


『ミスナの天敵ばっかりが集まったユニットだね』


 小さく呻きながら、二人に指摘されて唸る声が警戒モードになっている。


『さて、本来ならこのまま次へって所なんだけど。ごめんね~皆~』


『なんだ? まだ何かあったか?』


『それに関しては私から説明しよう』


 母さんの声だけだ響いて聞こえる。


『ちょちょ、えっ⁉ アズキ先生っ!』


『なんで此処に、通話だけどっ! うわ~、びっくりした』


『え~、では、アズキ姉さま。どうぞ~』


 嘘でしょう、母さんってば父さんに何て呼ばせ方をしてるんだよ。


 言っている父さんもちょっと恥ずかしそうに、話しを振っている。


『長年、どうやって勧誘しようかってずっと悩んで子が居たのよ。今回も勧誘が失敗するかなって思ってたんだけどね。ちょっとした事がきっかけで、この度、この世界にお誘いする事が出来たのよね~』


 え? もしかしてずっと前から僕って狙われてたっぽい? 嘘でしょう。


『それは、昔から言っていた。絶対にこの世界に引っ張りたい子ですか?』


『そうよ~、それじゃあ私が強制召喚するから。皆で可愛がってあげてね』


 なんか別の所では散々に勧誘って話しを……それよりも、強制? へっ⁉


「へっ⁉ 強制! ちょ、まだ心の準備とか。ひぅ⁉ わ、わわ、えっ⁉ あ、あのあのぉ、はぅうぅ~、えと、ですね。あぅあぅあぅ」


 酷いよ母さん。


「ほれほれ、落ち着かぬか。先ずは自己紹介からじゃろう」

「お、おんれぃ、ゆづき……です」


 もう恥ずかし過ぎて、死にそうです。


 顔が熱くって、もう蹲って一番近くに居た栞ちゃんの後ろに隠れる。



『ねぇ、抱きしめて良いかな?』



『ダメです、悠月ちゃんは私達がお守りしますので』




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