第5話 呪われた新人ちゃん



「聞いてない、ほ、ホラーって。無理、無理だよ~」


 せめて普通にゲームとかしてるだけだと思ったのに、全然違うじゃないかよ。


「全く、軟弱じゃのう」


 お前は最近のホラーゲームを知らないから、そんなことが言えるんだ。


 しかも、まだ画面越しなら耐えられたかもしれないのに、VRを使ったホラーゲームなんて最悪じゃないか、滅茶苦茶に怖いっていう話しか聞かないのに。


『めっちゃひよってる子がいるよ』


『悠月さん、頑張っていきましょう。私たちは沢山の候補者から選ばれたのですから』


『いざって時は守ってやるからさ。一緒にやろうぜ』


 この三人は既に聞いていた事なんだろうな、ある程度の覚悟は出来ているらしい。


「こうしてみると、お主が一番に女の子っぽいと思ってしまうの」


「うぐぅっ! が、頑張るもん」


 珠音のヤツが言ってはならない一言を言った。

 思わず自分でも驚く程すぐに見栄を張ってしまった。


『ふむ、良いコンビのようですね。良い人選です……もしかして、ユウビさんが勧誘をしたのですか? アズキさんが選んだとは考えにくいのですし』


 言ったことをすぐに後悔して蹲るARキャラである僕の姿を見ながら、マネージャーさんが考え込みながら、分析しながら妙な事を言う。


『マネちゃん、良く解るわね~。そうよ、この子達を選んだのはユウビちゃんです』


 母さんが軽く口笛を吹きながら、マネージャーさんを褒めた。


『ゆ、ユウビさん⁉ あの人に選ばれたんだ、それなら心配ないね』


『あのおじさまは、人を見る目だけは確かですからね』


『でも基本的にはポンコツのトラブルメーカーじゃんか、私は好きだがね』


 なんだ? 有名人名のか? 知ってないと不味いっぽい。


「ユウビさん? え、誰?」


 隣にいる珠音に尋ねてしまう。


「何を言うとる、さっきまで会っておったろう」


 なんで知ってる――はっ? さっきまで? え?


『あ~、もしかしてバーチャルライバーに詳しくない?』


『悠月さんはスカウトですから、見てない人には馴染みがないでしょうね』


『カラフルってバーチャルライバーの育成っていうか、支援と言うかな。まぁ事務所があるんだよ、そこの設立時から居る初期生で、中身がオジサンでガワは女の子な大先輩だよ』


 同期の三人が説明をしてくれるが、半分くらい頭に入って来ません。


 画面に映る僕のARキャラも、口をパクパクと開けて呆けている。


 それを見て、皆はただ僕が驚いて、声も出ないだけって思ってるんだと思う。


『元々は男性の絵を依頼していたんですが……アズキさんの悪戯で女性のガワが宛がわれましてね、そのままズルズルと人気が出てしまったんですよ』


 違うんですマネージャー。


 その人達は二人とも僕の両親なんですよ。


『ユウビちゃんもノリノリでやってたじゃんか~。私だけが悪く言われるのはどうかと思いま~す』


 確信犯、絶対に何かしらの罠に嵌めて父さんを操ってたよね、母さん。


 あの時に、父さんが憐みの目で去っていったのは。


 え? そういう事ですかね。更紗ちゃんと果歩ねぇが? いやいや、そんなはずは無い。


『質が悪い事に、怒るにも実績を残されしまい。悪乗りから始まったのに怒れない状況というのが、自分的には物凄い尺ですね』


『マネージャーさんの額に青筋が浮いてそうだね』


『えぇ、見えなくても感じ取れる声音でした』


 僕にも容易に想像が出来てしまう。

 本当に両親がすいません。心の中だけでも誤っておく。


『まぁまぁ、それよりも皆~、もうすぐお披露目の時間だよ~』


 知らない女の子のARキャラが現れた。


 父さんを可愛く女装させたら、きっとあんな感じの女の子だろう。


『えっ! ユウビ先輩⁉ は、初めまして』


 母さん、父さんに何をしたの? ってか、アレが父さんですか⁉

 僕って、母さんの血は身長とかだけじゃあないだろうか、父さん、怨みますよ。


『初めまして、コレからよろしくお願いいたします』


『マジかよ! あの、は、初めましゅて……今日からお世話になります』


 皆が挨拶をしていく、僕も挨拶をしないと、流石に変だよね。


「えぇ‼ う、あっ⁉ ……よろしく、お願いします」


「ふふん、楽しみじゃのう。コレから世話になるぞい」


 なんでコイツはこうも楽しそうなんだよ。


『順番だけど、一番目はファレナちゃん、次が栞ちゃんで、ウルラちゃんが三番目ね』


 僕が、最後、だと。


『えっと、あの~、悠月さんが最後で大丈夫でしょうか?』


 僕のARキャラが全身震えているのを見て、ファレナさんが気を使てくれる。


『サプライズのスカウト枠ってなると、最後にせざるを得ないのよね。皆でフォローしながらだけど、それで乗り切って貰うしかないの。ごめんなさいね悠月さんタマちゃん』


 本当に申し訳なさそうな声が聞こえてくる。


「はっはっは、気にするでない。人生の大半は何事もぶっつけ本番じゃて、それに助けもあるのだろう? ならば男の子ならば、これしきは乗り切ってこそじゃろう」


「うぅ、確かに、そう、だね。僕、頑張ります!」


 物凄く、皆から温かい目で見られている気がする。





 ==何時もの父さんとは思えない程にしっかりと、進行役をこなしていく。


『さて、それじゃ~、皆がお待ちかねの特殊新規生のお披露目会、開園ですよ~』



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