第4話 呪われた新人ちゃん



「ねぇ本当に良いわけ⁉ 僕は何も聞いてないし準備もしてないんだけどさ⁉」


 もう全ての準備が滞りなく終わった。


 僕の気持ちを置き去りにして。


「だから昨日、説明しなくて大丈夫ってきいたでしょ~」


「誰も、今日すぐにデビューなんて聞いてないんだけど⁉」


 あの時の妙な間は、こういう事だったのかよ。


「我は説明されたぞ。どういう事かとか事細かく説明をしてもらった」


 やれやれと珠音が肩を竦めて、僕を憐みの目で見てくる。


「ズルい、父さんっ⁉ 助けてよ」


「……ん~、助けるとでも?」


「思わないけど、この拘束は解いてくれても良くない!」


 ガタガタと体を揺らしても、全く外れる気がしない。


「ダメダメ、コミュ障な紬ちゃんはすぐに逃げ出す癖があるんだから」


 遠くの部屋から、ドアを開けっ放しにしている母さんのが聞こえてくる。


「コミュ障じゃないっ! 僕の周りの奴等が変人ばっかりだから避けてるだけだ」


 母さんの部屋と父さんの部屋は、何故か防音設備が施されているのだ。


「ようやく紬を連れ出してくれる友達が出来てて、俺は嬉しくかったよ。ちゃんと昨日のお礼は言っておきなさい。男友達は貴重だぞ、みんな良い子そうだったしね」


 責任の一端は父さんにもあるんだけど、分かってるのかな。


 姉さんと一緒になって、僕の周りを何時も牽制していたから友達が少なかったんだよ。


「ほんとう、今までずっと果歩ちゃんくらいしかまともに話せてなかったものね。それに果歩ちゃんもだけど、あの更紗っても私は気に入っちゃった。きっとあの子は私と同じね」


 うっとりした様子で、昨日のことを思い出しているようだ。


「えっ⁉ それって――」


 その言葉を聞いて父さんが急に青ざめた。


「あら、どうしたの劉ちゃん?」


 ニッコリ微笑んだ顔は、目だけが笑っていない様に見える不思議。


「いや、何でもない……紬、強く生きろよ」


 父さんが震えながら、僕の肩を優しく叩き部屋を出て行ってしまう。


「父さん⁉ なにその目は」


 理由を告げずに、父さんは自分の自室に消えて行った。


「はいはい、先ずは新規生のメンバーとマネージャーで本番に向けての会議よ」


 そういって、僕の部屋の扉を閉じられてします。


「ドキドキするの~、コレが我の仮の姿で話すのだな~」


「マイペースだ、なお前は」


「ふふ、我の利益になるならば、些細な問題など別にどうという事はない」


「僕を些細な事で片付けるなよ~」


 ポンっと何かシステム音がした。


『なんか、いきなり泣き言が聞こえてきたんですがね』


 いつの間にかディスプレイには通話ソフトが立ち上がっていて、相手に繋がっている。


『恩霊悠月さんとタマちゃんです。最後の一人をスカウトしてきましたよ』


 この声は母さんだ! 勝手に遠隔操作してやがる。


「あ、うぇ、えっと、あのぉ――」


 流石に親とか、名前を言う訳にもいかない。


『あはは、落ち着いて。大丈夫だよ~。取って食べたりしないからさ』


 明るい声の主は、青髪の人魚っぽいイメージ絵で活発そうな女性だ。


 同い年くらいだろうか、元気な声だ。


「今の状態では食べてくれと言っている様なもんじゃがな」


「ちょっ! お前何言ってんの⁉」


 珠音の言葉に動揺していると、次々と会話ルームにアイコンが映し出されていく。


『あら? 魂ちゃんも喋るって事は二人で一つ的な感じなのですか⁉』


 黒髪でかぐや姫をイメージしたのか、和服が似合いそうな清楚な女の子が驚いている。


『姉妹的な感じなのか? ちょっと新しいな』


 最後に、カッコイイ感じのハスキーボイスに、巨大なドラゴンでも狩って暮らしていそうなイメージの女性が出てきた。良いなぁ~カッコイイ感じ。


「僕は男だよ!」


 全力で否定してやる。


『え~、嘘だ~。声が乙女だよ?』


 あっさりと玉砕した。


『設定では間違っていませんよ? 最初からなり切ってますね、良いですよ』


 マネージャーさんすら僕を女の子と思っている。


「誰も信じんぬな~。諦めよ、主を初見で男とは誰も思わんという事じゃ」


 珠音の何とも言えない感じが伝わったのか、皆が一瞬だけ沈黙した、


『……えっと、本当に男の子か?』


 もう声を出せず、唯々頷くだけだった。


『うは、マジで? すっごいアタシよりも女の子な声なんだが』


『コホン、先ずはお互いに自己紹介からしましょう』


 マネージャーさんが咳ばらいをして、とにかく話しを進めようとしてくれる。


『そうですね、では先ず私(わたくし)から。天(てん)原(はら)栞(しおり)と申します。天の川で遊んでいたところ、落ちてしまいこちらの地球に来てしまった、宙の住人です。以後、よろしくお願いします』


 かぐや姫っぽい女の子が、キャラの説明付きで自己紹介をしてくれる。


『おぉ~、すっごいお嬢様っぽいね~。そんじゃあ次は私ね。ファレナってクジラ族のやんちゃもんだよ。楽しそうな地上の生活に憧れて海を飛び出して来ちゃったんだ。仲間からはトラブルメーカーとか言われてたけど、ムードメーカーだから、トラブルとか運んで来ないから安心してよね』


 何となく、そのイメージは分かる気がする。クラスでも人気者っぽい。


『次は、私か。此処に来る前はハンターとして生きてきた。名前はウルラだ』


 自己紹介まで男らしくカッコイイ感じだ。


『そして最後の子ですが、説明をお願いします。アズキ先生』


 アズキって……確か、母さんのペンネームだな。


『はいは~い。最後の子は恩(おん)霊(れい)悠(ゆ)月(づき)ちゃんです。ある神社の女神様から神罰を受けて呪われちゃった子で、寂しんぼな女神様も力加減を間違えて悠月と離れられなくなっちゃったのよ。呪いを解くためには神社の再建をしなきゃだから、こうして出稼ぎに出てます』


 すっごいハイテンションで説明をしてくれる。


「あぅぅ。よ、よろしくお願いします」


「凄いの、事実をそのままじゃぞ」


『……本当に急に決まったので、驚きましたよ』


『いや~、ごめんね。何せこの機会を逃したらもうチャンスが無いと思ってさ~』


『あ、あの……アズキさん。その、この度は素敵な立ち絵をありがとうございます。その、ずっとファンだったので。まさかアズキさんに描いていただけるとは思わず』


 本当に好きなんだろうな、ちょっと饒舌になって必死な感じが伝わってくる。


『あら~、良いのよ~。これから頑張ってね』


 今頃、母さんはくねくねと嬉しさに打ちひしがれているだろうね。


『まぁ良いでしょう。サプライズとして一人増えたと報告する事にしましょう。さて、皆さんは新規生での加入となりますが、アイドル枠ではありますが、基本的に、こちらの【TRPG】や【VRゲーム】プレイする事を主体とした活動をして頂きます』


『すいません、【TRPG】は知っているのですが、VRゲームって何をするのですか?』


『そうですね、色々やって頂きますが。基本的にホラーが中心でしょう』


「は? ほ、ホラー?」



『グループ名は【エクソシズム】です』



 いや、そうじゃないって。聞いてないよ、ホラー中心の活動ってなにさ。



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