第2話 呪われた新人ちゃん



「んみゅ~、ベッド? あれ……なんで?」


 確か、僕は神社で肝試しをしていたはずだ。


「ぬ、起きたか」


 そう、こんな感じの少女が……は? あれ、なんで居るんだよ⁉

 というか、此処って僕の家だよね。


「ツムちゃん、大丈夫?」

「どっか痛い所はあるか?」


 宙に浮いた少女が僕の両親を呼んできてくれたようだ。


 悪い子ではないらしい。


「へっ? あ~ちょっと後頭部が痛いかも」


 気を失った時にそのまま倒れたからな。


「倒れた時にぶつけたのか?」

「たぶん?」


「ちょっと見せてね~」


 母さんが後頭部を優しく撫でて、髪を分けて確認してくれる。


「大丈夫そうね、ちょっとコブになってるけど。すぐに治るわ」


 そう言う母さんの後ろから、心配そうに顔を覗かせる少女の姿があった。


「あ~、その~、なんだ。悪かったの」


 僕をチラチラ見ながらも、顔だけは合わせずらいのか横を向いてしまっている。


「まぁ別に、良いけど……んぁ? ……なんで此処に居るっ!」


「そうそう、今日からタマちゃんは我が家の一員になりました」


「我が家に娘が増えました。わ~~~ぱふぱふ」


 父さんと母さんが、妙なテンションで盛り上がっている。


「へ? え? はぁ⁉」


 というか、一員って一緒に住むのかよ。


「主らは色々と端折りすぎじゃっ!」


 うん、その子の言う通りだと思う、説明をしてほしい。


「事実は変わらないなら、明るい方が良くない?」


 母さんは相変わらずにマイペースだった。


「己の息子が神罰を受けたというに、明るく語る内容か?」


「神罰ってなにさっ⁉」


 何やら物騒な話じゃないか、それって。


「良いじゃない、別に深刻な内容じゃなかったし」


「むしろ可愛い内容だったよ。聞いた時に杏ちゃんと思わず破顔一笑って感じだったよ」


 父さんも父さんで、母さんと一緒になってこの状況を楽しんでいる節がある。


「ぬ~~、何なのじゃお前の一家はっ! 我は見えとるし、神様だって理解しながらのこの態度よ。おかしいのじゃ、絶対に変なのだ」


「それに関しては否定しない、むしろ僕だってちょっと、どうかと思ってる」


 自分の両親ながら、恥ずかしい限りです。


「何とかして欲しいのじゃ」


 顔を赤くして恥ずかしそうにしながら、僕に助けを求めてくる。


「や、無理だから」


 なんとか出来たら、ずっと前から手を打っているだろう。


「あらあら、実の親に酷い言いようね」


「何時もながらの塩対応だね~、お父さんちょっとキュンと来ちゃったよ」


「意味が分からん、それよりも神罰ってなんだっ⁉ その説明を求む」


 このままじゃあ埒が明かない。


「簡単に説明すると」


 最後まで言い終わる前に母さんの言葉を遮る。


「母さんはちょっと黙ってよう。話がややこしくなるから」


「む~、ツムちゃんってば冷たくない!」


 冷たくありません、事実を述べています。


「先ずは落ち着いて聞いて欲しい。神罰は眷属化というモノだそうでな。まぁ、彼女の部下というか代弁者といったところだ。かんなぎみたいなもんだろう。ただ、問題があってな」


 ちょっと言い難そうにしながら、僕の顔を見て目を逸らした。


「問題って?」


「珠音ちゃんはどうやら……紬を、その、女の子と勘違いしたらしくてな」


 何を言ってるんだろう。


「勘違い? 僕を女の子? お前、頭は大丈夫か?」


 少女を横目に見ながら、睨みつける。


「ふん、それに関しては我は悪くないもんね。そんな可愛い顔して華奢な体格、しかも肌は白く綺麗で身長も低いお主が悪いのだ」


 言うに事欠いてコイツ、僕が一番気にしている事をズバズバと言ってくれるじゃない。


「私の血が色濃く出ちゃったのねよね~」


 僕は父さんやお爺ちゃんの遺伝子が色濃く出て欲しかったです。


「それよりも、それって何か不味い事でもあるの、死ぬとかじゃあないんでしょ?」


「そうだな、死にはしない……ただ、このまま何もしなければ紬、君は女の子へと徐々に変わっていってしまうんだそうだ。最終的には乙女になっちゃうってさ」


 僕を落ち着けようとしてか、肩に手を置かれて衝撃的な事実を突き付ける。


「え? なにその最悪な呪い、死なないけど死ぬじゃんか、男として⁉」


 何を考えてるんだこの子は、どういう呪いだよ。


「それでね~、予想外の神罰を与えちゃったからタマちゃんがツムちゃんから離れられなくなっちゃったんだって。だから、一緒に住みましょうって事になったの」


「どうせなら楽しく過ごした方が良いだろう」


「いや、うん。まぁそうだけど、そうじゃなくってね。え? なに、僕はどうすればいいの?」


「我の神社を盛り立てて、ちゃんと管理すれば神罰は解ける」


「あの廃墟を? 無理じゃない?」


「無理じゃない、頑張って盛り立てねばお主がこまるだけじゃ」


「という事でね、私から~良い案を出してあげようかなって思ってるの」


「いや~、渡りに船ってこの事だよね。タイミングもバッチリ

の良い案件があるんだよ。今ならなんと、ソレを引き受けてくれれば、神社への寄付も集まるし、盛り立てて行くことも不可能じゃないという、一石二鳥どころか四鳥もあるよ」



「な、何でも良いから、呪いを回避できるなら。僕はやるよっ!」



「神罰じゃって言うとろうがっ⁉」


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