プロローグ(中編)
「雰囲気あるね~」
まだ日が出てるのに、周りはもう薄暗い。
「何で、こんな時間に……」
まだ夕日だって見えるのに暗いとは思わなかった。失敗した、明日の朝にでも一回下見に来ていたら、まだ気の持ちようも違ったのに。
「肝試しを朝にはやらない?」
くそ、確かにそうだけど。いきなり行くっていうのは違うだろう。
「だな。山奥って訳じゃないし、大丈夫だろ」
山奥ではないけど、結構な階段を上ってきた。
「それにしても、この階段ってここに続いてたのね」
僕の家から離れた、目立たない轍が続く道の端にちょこんとあった階段道。
「なんで紬は知らないの?」
「好き好んで行かないだろ、こんな場所」
爺ちゃんと曽爺ちゃんが畑に行く道は、子供のころから怖い道だった。
街灯は無いし、黒猫やタヌキが行き来する時に、よく僕と目が合うのだ。
「怖くて行かなかっただけだろう」
「そんなことない」
ホクトの言う通りだけど。本当の事を言ったら、僕を可愛がるんだよなコイツ。ホクトだけじゃなく、僕の周りの奴等やすぐに子供扱いをしやがる。
「でも、神社の存在は知らなかったね?」
「そもそも、この山は曽爺ちゃんの土地だったんだぞ。親が譲り受けたのは最近なの」
爺ちゃんはもう年で、流石に管理できないと僕の両親に譲ったのだ。
「ちゃんと管理しなさいよ」
「僕に言うな」
「まぁ、この様子じゃあ曽爺さんって人も碌に管理はしてなかったんだな」
「階段も、殆どがボロボロだもんね」
下の方はまだ綺麗な階段だったけれど、上の方は所々で崩れたり、割れたりしている。
段差も急で、高齢の人が上って来るには厳しいだろう。
足が悪かった曽爺ちゃんなら、尚更に此処までは来られなかったんだと思う。
「道に迷わないだけマシだとは思うけど?」
確かに道には迷わないけれどね。
「灯りが無いだろうが、灯りが……」
提灯を掛けるような棒が一定間隔で立っているけど、管理がされてなかったのだから、灯りが灯されてる訳もない。
「あるよ?」
「あるじゃない」
「あるな~」
三人ともバックから徐に懐中電灯を取り出して、僕に見せつけてくる。
「なんでお前らだけライト持ってんだよ、確信犯かっ⁉」
準備が良すぎる。
「計画者は更紗だぞ」
「企画は未希?」
「実行犯は北斗じゃない」
三人がそれぞれ罪の擦り付け合いを始めたよ。
「この、全員が同罪じゃボケ~」
そう僕が叫んだのに、三人は全く聞き入れてくれない。
「じゃあ~、道反れないでね。きっちりこの石畳を進んで行けば着くんだから」
「そうだぞ、小さいお前が迷子になったら探しずらいからな」
「はい、紬の分と懐中電灯だよ。怖くないようラジオ付き?」
やっと解放されたけど、もうこんな所まで来てしまった。
「行けば良いんだろう、行けばっ! 余計なお世話じゃい。怖くなんかないからな」
僕が帰らない様に、三人が協力して道を塞いで立っている。
電池も入ってるし灯りもちゃんと付く。ラジオも聞けるな。
「でも、しっかりラジオは付ける?」
小さくだけどラジオが付けっぱなしなのを更紗に指摘された。
「う、五月蠅いな。じゃあ誰か一緒に来いよ」
三人ともに顔を合わせて、示し合わせた様に、
「……無理?」
「それじゃあ意味ないだろ」
「頑張って~」
物凄くムカつく笑みで僕を送り出そうとしてくる。
「何かあったら叫んで? 駆け付けるから」
そう言いながら更紗はバックから、また別の機材を取り出している。
「なんでカメラ持ってんの、更紗さんよ」
僕は気になって更紗の取り出したカメラをジッと見つめながら聞く。
「気にしない、気にしない?」
すっごく気になりますよ。何を撮る気なんですかね、ソレで。
「動画も撮れるのか、それ?」
「うん、お姉ちゃんから借りて来た?」
更紗のお姉さん、妹さんに危険なモノを渡さないで頂きたいです。
「用意が良いわね。こんなんだったら仲間を集めて脅かし班でも結成してセッティングしとくんだったわね。きっとあの子達も喜ぶだろうし」
「なるほど、確かにそれならいい商売が出来たな。失敗した」
ダメだ……これ以上は此処で、ごねていると話しを大きくされそうだ。
「話しを大きくすんな、もう行く」
「「「気を付けてね~」」」
ひらひらと手を振って見送ってくれる。
「他人事だと思いやがって」
==あの時、無理やりにでも帰っとけばよかった。
あぁ~、時を戻してください神様。
「神様、ここ、此処におるぞ~」
「うるせぇ、お前は悪霊だ」
「む~、失礼な奴だな……もうちょっと女の子らしくなるように、呪いの進行度を進めるぞ」
「すいませんでした、お許しください」
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