カース・チャーム
風月七泉
プロローグ(前編)
「ねぇねぇ、呪いって信じる?」
「そんなもん無いない。有名武将の墓に粗相した動物だって平然と生きてんだから。人間だって同じだよ」
「そうかな~、俺はあるかもしれないと思うけど?」
「はっ、お前もかよ。僕の周りのヤツ等は随分と夢見がちですね」
「……じゃあ、確かめたら良い?」
放課後の学園、もうすぐ夕暮れ時の時間だが、まだ疎らに人がチラホラといる教室の窓辺に一人の机の前に三人が囲む様に立っている。
「確かめるって、何すんだよ?」
幼馴染と何時も帰るため、今日も教室に残ってただけなのに何時ものメンツが揃う。
「そりゃあ、この夏って季節だぜ。決まってんだろう」
よりによって、僕がもっとも苦手とする話題を持ち出す、ちょっと体育会系の男。
「決まってないし、嫌な予感しかしないからパスで」
全力で回避に回るけど、
「……それは、ない?」
簡単に阻止された。
可愛い日本人形みたいな女の子で、スタイルも抜群に良い。けど、ちょっと無口で表情が変わらないし、人と話すときはジッと目を見つめて話すので、絡み辛いと一人で居る事が多い子だった。最近は僕や僕の悪友女子のヤツと一緒に居るのを見かける。
「そうそう、だって信じてないんでしょう? なら怖いモノなんてないよね~」
コイツが悪友女子、スレンダーな体だけど、長く肉付きの良い躯体をしているため、密かなファンクラブがあるとかないとか、悪友一号が言っていた。
「放せっ! 二人して、女がそう簡単に抱き着いて来るんじゃあねぇよ」
両脇を抑えられて、持ち上げられる。
「……胸、気になる? 気にしない、当ててるだけ」
それを止めろっちゅうとるんじゃ。
「ちょっと、アタシの方はなんで見ないのよ」
そりゃあ、気にするまでも――、
「そりゃ、お前のが無いからっ――だぶぇっ⁉」
いえ、何でもありません。
「僕は二人って言ったろうが、バカ野郎」
良かった、心の中だけで思ってて。保身の弁明はきちんと声に出して言ってやる。
「余計な一言、早死にするよ?」
「見事な、蹴りだった……体育着さへ履いていなければ、更にグッドだったのに――ぐっ⁉」
「アンタみたいのが居るから、仕方ないのよ」
本当に、色々と残念な三人組だ。
「追い打ちに頭をグリグリと……南無」
「自業自得? 仕方ないね」
いつもは誰にでも優しく接するのに、仲良くなった子には結構に辛辣だな。
「ていうか、お前ら僕を何処に連れてくきだ」
「とりあえずは、安全確保?」
「そうね、アンタの幼馴染がいつ戻ってくるか分かったもんじゃない」
助けて先輩、生徒会の仕事とかほっぽって僕を助けて下さい。
「過保護が過ぎるんだのな~、華歩かほ先輩だけに……まぁ、あの足に踏まれてみたくはあるな」
いつの間にやら復活した悪友が、頭を踏まれながら腕組みして頷いている。
「未希みき、その男は脚フェチ? 下着よりも踏まれると興奮するらしい」
「ねぇ、更紗さらさ。知ってて黙ってたわね」
そう言えば、コイツは脚の話しが多い気がする。
「気のせい?」
絶対に嘘だと思う、吹けない口笛で更紗が誤魔化そうとする。
「僕は君らの事が怖いです。ってか、いつまでも寝てないで助けろよホクト」
「俺から見ると、美女と美少女がジャレてい――ぶぶべらっ⁉」
ダメだコイツ、早く処理しないと。
「的確に急所を突く紬つむぎの方が、酷いんじゃない」
僕はお腹を蹴ろうとしたのに、未希がワザと方向を変えた様に思うんだけど。
「紬つむぎちゃん、事実を言われたからってあんな場所を蹴ったらダメ。汚れちゃう」
「君らが僕を持ち上げるから、狙いがずれたんだよっ! つうかな、意図的に動かしたろう」
「暴れるから、きっと軸がズレた?」
「知らないわよ、紬が暴れるからでしょう」
やっぱり意図的に狙わせたんじゃないか、流石に僕だってそこは蹴らないよ、同じ男としても痛さは良く解っているつもりだ。
「だから、放せって。僕は行かないからなっ、絶対に行かないぞ」
「ふふ、怖いのかね紬君。いや~、やっぱり口だけで男らしくは無いな」
股間を抑えたながらも、フラフラと立ち上がるだけ男らしいな。
「あ、煽っても、無駄だからな」
「怖いモノは怖いと言ったらどうだ? そしたら俺が付いて行ってやるからさ」
「こ、怖くなんかないね。いつまでも女々しい僕だと思うなよ」
「いや~、事実を見るまでは何とも言えんな~」
「大体、この近くにそんな場所は無い。門限が過ぎちゃうじゃん」
「それがあるんだな~、コレが、つうかな、言い難いが、お前ん家が持ってる山だぜ」
「は? なに、それ?」
「俺が、お前の父ちゃんに聞いたんだ」
良い顔で、サムズアップしながら僕に言う。
「この夏、肝試しをしたいって言ったら、お前ん家の裏山に廃れた神社の跡地があるって」
何を言ってくれてんだ親父っ⁉ 余計な情報をホクトに話してるんじゃないよ。
==そう、こんな下らない話に乗せられなければ、こんな、こんな事にはならなかったのに、なんで僕は、あの時に強がったりしてしまったんだ。
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