第26話 ダンマルダー
銀髪の
「ン…… エト シャリポ?」
子供はゆっくりと目を開け、その視界に入った同族の大人に話しかけた。
「エグリタ ラト パスタンテル?」
「タラ ティヌ ライ バナ ナスン」
二人の会話は聞いた事のない単語ばかりだった。村の人達の話す言葉とも違う。この種族が話す言葉?
いや……全く違うわけではない。オレはそう直感する。何かが似ている。全く違う言葉ではなく、近い言語。例えば英語とフランス語のような……そんな雰囲気を感じ取った。
「ませき さがしてるのか?」
ダメ元で尋ねてみる。大人の方の言葉の中に
「ほう つたないが にんげんの ことばだな ダンマルダーに しては めずらしい」
ギョンボーレの大人が答えた。『ダンマルダー』だけはわからなかったけど、他は理解できた。村人たちと同じ言葉だ。
「おまえたち ダンマルダーは にんげんのことば ききとれるが はなしはできない そのかわり まりょくで ことばを りかいさせる」
〈自動翻訳〉スキルのことを言っているのか? なるほど、転生者の言葉を強制的に頭の中で変換させるのがあのスキルの力ということか。
となると『ダンマルダー』は転生者を指すのか。以前、『マルダー』が「魔王」を指す言葉だと村長から聞いたことがある。もしかしたら、その前につく『ダン』は対抗するとか戦うとか、そんな意味か? 魔王に対抗する者……転じて「転生者」。
この2ヶ月の習慣の結果か、オレ脳の片隅では常に知らない言葉を理解しようという考えが動いている。
「おれたちに そのちからは ない だから じりきで ことばを まなんでいる」
「なんだと!?」
ギョンボーレは目を大きく見開いた。
「そうか ダンマルダーにも かわった やつが いるもんだ」
「それで しつもんの こたえは?」
「なに?」
「ませき さがしているのか?」
オレはさっきと同じ質問を繰り返した。
「さがしている すでに われわれは このちほうの ませきを ふたつ みつけた」
「何だと!?」
思ってもない言葉だった。失われた魔石は2つ。すでにこいつらは見つけていたのか!?
「どこにある!? このさんにんの むら ませき うしなって こまっている」
オレは、キンダーとイーズル、そしてセンディを見ながら言う。
「しっている だから われわれが あらたな ませきのたね かいしゅうした」
「ひとつだけでも それを このものたちに ゆずって……」
「だめだ」
言い切る前にギョンボーレは拒絶した。
「もはや にんげんに ませき まかせておけない」
「どういう ことだ?」
「おまえたち ダンマルダーが ませきを うばって こわす せかいじゅうで これがおきている ただしい かんり ひつよう」
「まってくれ!!」
キンダーが一歩前に出た。
「おれたちの むら ませきなくて こまっている いちにちでも はやく ませきどうに ませき おさめないと いけない」
「きのどくだが ほろびを うけいれてくれ」
信じられない言葉が飛び出た。
「われわれ が ませきを そだてたら とちの やまいも なおる そのあと むらを さいけんしろ」
「そのまえに おおぜい しぬ それは さけなければ……!」
「うらむなら こいつら ダンマルダーを うらめ!!」
その言葉を聞いた瞬間、反射的にオレは剣を抜き、ギョンボーレの鼻先に突きつけた。
「ませきを よこせ」
ギョンボーレは鼻を鳴らして笑う。
「しょうたい あらわしたな しょせん ダンマルダー」
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