第13話 大冒険ついに始まる!!……か?

「うん? どうした、ゲン?」


 オレが出した声に気づき、リョウとアツシは話を止めてこっちを見てきた。


「いや、ちょっとな……」


 もう少しだけ考える。うん……うん……ひょっとしたらやれるかも。


「なあリョウ、あんたさっき、この世界で分かる言葉は『ウケル』くらいだって言ってたよな?」

「あ、ああ……」

「それをどこで知った?」

「どこでって…… この世界の奴が笑う時に必ずそう言ってたからだよ。引っかかるだろ、日本語の『ウケる』とほぼ同じ使い方なんだから」

「だよな、そうだよな!」


 うん、そうだ。リョウはこの世界の人間の言葉を聞き取って意味を推測したんだ。

 思い返せばオクト達も、直接この世界の言葉を理解してるわけではないのに、この世界での数え方の落とし穴に気づいていた。


「他には、他に知ってる言葉は?」

「いや、だからねえっての」

「本当か? 本当にそうか!?」

「な、なんなんだよ急に……?」


 突然問い詰められたリョウはたじろいでいる。他に何か、何か気づいたことがあれば……。


「……ヤ」


 アツシがぽつりとつぶやく。


「『ヤ』ですよ! あいつら、人に何かを聞く時に語尾に『ヤ』ってつけません?」

「ああ……言われてみれば」

「それだ!!」


 疑問文の最後にヤを付ける。超重要情報だ! あとは……


「『これ』とか『あれ』って何ていうかわからないか?」

「お、おいゲン。本当にどうしたんだよ……?」

「何となくでいいんだ。『これ』とか『あれ』にあたりそうな言葉に思い当たりないか」


 オレは高揚していた。こんな気分初めてだ。あの白い空間で想像していた高揚感とはだいぶ違うけど……オレの冒険が本格的に始まるかも知れない!


「『これ』とか『あれ』なぁ…… アツシ、なんかわかるか?」

「う、うーーんどうなんでしょう?」


 二人は腕組みをしながら、記憶を絞り出している。


「物々交換の時に『ラノ』とか『ラータ』とか言われる事があるな…… アレかなぁ……?」

「ああ……僕も、指を差してラノなんちゃらみたいな事言われた覚えがあります」

「オッケー、多分それだ! リョウ、アツシ、明日オレをまたあの村に連れて行ってくれないか?」

「明日ぁ? 物々交換やったばかっかで、持っていくものなんかないぞ?」

「手ぶらでいい。……いや、なんかあったほうがいいかもな。果物とか」

「それなら、ヤマモモみたいな甘酸っぱい木の実が、この辺の山に沢山なってますよ」

「よし、それを採りながら村へ行こう。二人共、道案内頼む!」


 オレは両手を合わせて二人に頭を下げる。


「……そこまで言うなら仕方ないな。アツシもいいか?」

「いいですよ。どうせやらなきゃいけない事があるような生活でもないですしね」


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