第3話 SSR級スキル! そして旅立ち…

 これからどうすると言われても……


「えーっと死んじゃったんスよね? 天国とか地獄とか、そういうとこに行くんじゃないんですか?」

「へぇ? キミずいぶん冷静だね? 死者、特に事故死の人は、なかなかそれを受け入れず、泣いたり暴れたりするもんだけど…?」

「いや、まぁ、ショックはショックなんですけど……あの状況だとやっぱそうかーって感じなので……」


 正直これまで、特に人生が充実してると思ったことがなかったし、これからもあの日常の中で味わえるような気がしない。


 死んで意識が消滅するんだとしたら死にたくなかったけど、精神的にはピンピンしてるので、これはこれでアリだ。こういう事言うと、偉いおっさんに「ゲーム脳だ!」とか言われそうだけど、リセットボタン押して別のゲームを始めると思えば、大してショックはない。あ、いや、でも地獄は嫌かな……


「実はね、いつもならこのまま天国か地獄へ送る手続きに入るんだけど、あいにくどちらも今、定員オーバー気味でさぁ……」

「は? 定員とかあるんスか??」

「うん、ちょっと隣の管轄で、最終戦争ハルマゲドンがあったばかりでさー。こっちの死者を全員受け入れる体制が整ってないのよ。そういうわけで、今は特例として肉体はそのままで元いた世界とは別の世界への転移を推奨しているんだよね」

「別の世界へ……転移?」


 何処かで聞いたような話だ。


「そ! 特に死の間際に勇敢な行動をとった人間は大歓迎! 特別なスキルをあげるからさ、それでちゃちゃっとその世界を救ってほしいんだ!」


 女神様はそう言って右手を頭上に掲げる。するとそこに映像が浮かび上がった。


「これはその世界のサンプル映像。見ての通り、キミたちが言うところのファンタジー世界ってやつ? そういう世界がウチの管轄にあってさ」


 それはゲームやアニメで散々見てきた中世ヨーロッパ風の世界が広がっていた。そしてそこで暴れる魔物、それを率いる魔王。さらに、魔王と戦う勇者たち……


「キミには、この勇者の役割をお願いしたいんだよね」

「やるっ! やります!!」


 二つ返事。真実マジでリセットボタンじゃん! 別のゲーム始まったじゃん!! 前の世界よりもよっぽど充実した日々を送れそうだ。


「それじゃあ、さっそくコレ引いて」


 女神様は一体何処から取り出したのか、目の前に福引器を置いた。商店街のお祭りで見る、六角形で取っ手のついたアレだ。


「なんすかコレ??」

「これでキミに与える特殊スキルを決めるんだ。さぁさぁ回して!」

「はぁ…」


 オレは言われるがままに取っ手を持ってガラガラと回した。何回転かさせると六花右傾の横に空いた穴からポンと、虹色に輝く玉が飛び出てきた。


「おめでとうございまーっす!!」


 女神様はカランカランカラン♪と、ハンドベルを鳴らした。


「SSRランクスキル〈n回連続攻撃〉が出ましたー!!」

「SSRってことは……すごいんですか?」


 ずいぶん俗っぽいランク付けだな…


「はっきり言ってチート級!」


 女神様は首を縦に振りながら言う。


「常人が1回攻撃するのと同じ速さで、複数回攻撃できるんだ!」

「えーっと、複数回ってのは2回とか3回とか?」


 確かにすごいけど、チートってほどでもなさそうな……?


「はぁ…困るよぉ?そんなテレビゲームみたいなちまちました数字で考えられると…… 理屈の上では65535回攻撃可能さっ!!」

「ろくまっ……ッ!?」


 なるほどそりゃチート級だ…


「もちろん、しっかりと研鑽を積んで、スキルを完全に自分のものとしないと、ソコまでは辿り着けないけどねー。でも君が最初に言った、2回とか3回とかならすぐに出来るはずだよ」

「やった…そんなスキル持ってたらもう怖いもん無しじゃんか!」

「よかったねー」

「それじゃあ女神様! さっそくオレをその世界へ飛ばして下さい!!」


 自分にそんな力が備わったと言うなら、さっそく試したい。すぐに剣と魔法の世界で壮大な冒険を繰り広げたい!!


「んーー、なんか他にやることがあった気がするけどー…、まぁいっか。そのスキル持ってればなんとかなるっしょ」


 女神様はオレの方に手の平を向ける。手の平から光が溢れ、それがオレの身体に伝わってきた。


「んじゃ、いってらっしゃーい」


 光が強くなり、視界が真っ白になる。あまりの眩しさに思わず目をつぶる。



 ――そして



「ラータ トゥキトマ ヤ?」



 スキルを発揮するとか、壮大な大冒険とか、それ問題だ! 人の言葉がわからねえ!!

 オレの異世界ライフ思った以上に厳しい状況からスタートした。




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あーー…… やっちゃったわ……


さっき来た子に「自動翻訳」の通常スキルあげるの、まーた忘れちゃった。


これで何度目だっけ……? えーっと…………


まぁ、いっか!!


ちゃんとあげた子の方が多いし、SSRスキル持ちならなんとかなるっしょ!

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