第4話 side紡
『いいから、そこから動くなよ。』
そう言うと彼は走っていってしまった。
話し相手がいなくなるとまた先程のクラスでのことを思い出してしまう。
「好きです!これから君の事を知っていけたらなと思ってる!」
またこれだ。しかも今回はお仲間を連れての大所帯と来た。贅沢な悩みかもしれないが私はもうウンザリしていた。
『知る』だけなら友達でいいのでは?
なら今無理してまで付き合う意味は?
そもそも告白だけならその大所帯はいらないのでは?
そんな考えが渦巻いているとクラス中から話し声が聞こえてくる。
「やっぱ……お似合いだよね。」
「これはイケルっしょ。」
「このままサッカー部のマネやってくんねぇかなぁ。」
「あの先輩ってサッカー部の!?」
もうめんどくさいを通り越して苛つきさえおぼえる。
そんな状態を見かねてか後ろにいた美樹が心配そうに覗いてくる。
私は小さく首を横に振ると、美樹は一歩下がり元の位置に戻った。
息静かに吸い、私は切り出した。
「先輩の気持ちは嬉しいのですが、今はそういう特定の人を作るつもりはないので、先輩の気持ちには御応えできません。」
先輩は照れくさそうに頭をかきながら小さく『そっか。』と苦笑いしていた。
いつもならこれで終わるはずだった。
「あのさぁ、別に付き合ってる男がいないんだったら試しに付き合うのもアリなんじゃねーの?」
「そうそう、ていうかぶっちゃけちょっと調子乗ってるでしょ?」
「そんなに生意気言ってると、いつか夜道で襲われちゃうかもよ。」
本人ではなくお仲間の方が騒ぎ始めた。
正直クラスに入ってきた人数を見た時からこうなるのではという予想はあった。
今ここで何を言っても逆効果になるだけだと思い、私は固く口を閉ざすことしかできなかった。
運良くたまたま通りかかった現国の木之本先生が1年生の教室に2年生が何人もいるという異常さに気付き、2年生達を連れ出してくれた。
それでも私の問題は解決しなかった。
「今のは空気的にOKする流れだったでしょ。」
「男フッて楽しんでるんじゃねーの?」
「あの先輩でダメだったら誰ならいいのよ。」
流れ?楽しんでる?誰なら?
好きじゃないから断った。それじゃダメなの?
私は無意識の内に教室から飛び出していた。
私は誰もいない場所を探して歩いていると非常階段を見つけた。裏庭側のこちらなら昼休みは見つかることはなさそうだ。
安堵して気が抜けると自分お腹が小さく鳴るのが聞こえた。誰に聞かれるわけでもないのに顔が熱くなってるのが分かる。
ここで財布もお弁当も席にかけてあるバックの中だということに気がついた。
「お母さんに後でちゃんと謝ろ。」
そんなことをボーッと考えていると、1人の男子生徒が裏庭から歩いてくるのが見えた。
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