第2話

 プリント運びという居残りに憂鬱を感じながらお昼を迎えた。


「奏太、購買行こうぜ。」


 そう言いながら軽快な足取りで近づいてきた湯川に『ん』とだけ返して立ち上がり、並んで購買に向かう。

 購買でお目当ての物が買えた俺達は湯川の『なんか高校生っぽいことしたいから裏庭で食おうぜ!』という提案で、裏庭のベンチで二人並んでパンを貪っていた。


「いやぁ、いいね。裏庭でダチとメシ!高校生っていうか、青春って感じするわぁ…。」

「俺かお前が可愛い女子だったら、もっと青春だったな。」

「それはお互い言いっこなしだぜ?」


 いや、俺はあると思う。少なくとも俺には言う権利があると思う。既に三人フッてるお前と違って、俺にはあると思う。

 そう思いながら軽く睨んでいると。


「んで、サッカー部に来てくれる気になったのか?」

「なんで。」

「木之本に部活動見学が~とか言ってたじゃん。」

「嘘だよ。木之本先生にはバレてたけどな。」

「そっか~、てっきり来てくれるもんだと思ったぜ…。そんなにサッカー部嫌か?良いセンパイばっかだぞ?」


 理由はどうあれ毎回熱心に勧誘してくれるのは、俺としても悪い気はしてない。むしろそれを断り続けてることに申し訳なさを感じている。

 それでも、湯川こいつみたいに真剣に取り組んでいる人間と一緒に何かをやるというのは、きっと、には無理なのだ。


「…サッカーが嫌とかじゃなくて、バイトするから部活に入る予定はないんだ。悪いな。」


 そう言うとなぜか俺の顔を見ながら『ふ~ん』と言ったと思ったら『なるほどね』と言って立ち上がり。


「これやるよ!やっぱパンといえど4つは多かったわ。」


 と俺に1つ残ったパンを押し付けながら。


「んじゃ、俺はセンパイに今日の部活のこと聞いてくるから先に戻っててくれ。」


 とだけ言い残して行ってしまった。

 残された俺は自分のなんとも言えない不甲斐なさを感じながら、パックジュースを流し込み、もらったパンをどうしようか考えながらベンチから立ち上がった。


 とりあえずもらったパンは同じクラスの大森 ふとし君にあげよう。そうしよう。



 裏庭から校舎に戻る途中にある非常階段を通り過ぎようとした時、何か物音したのに気づいた。

 音の主を探して非常階段の方に視線を向けると、そこには。



 先日のが居た。

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