第6話 使い道

日曜日になった。

パチンコ屋で待ち合わせて、いつもの十二時五十分。

横山は相変わらず先に来ていた。


「よお。今日は作戦を考えてきた」

「また甘デジか?」

「違う。甘デジを打つから負けるんだ。いきなりハイリスクハイリターンの台で、ひたすら当たるまで粘り強く待つことだ。諦めないことが作戦だ」

「もはや作戦でもないな」


パチンコ店内へと入った。

横山は早速ハイリスクハイリターン台に座って早々に打ち始めた。

俺もとりあえず隣の空き台に座り、打ち始める。

しばらく二人とも当たらず、玉が飲まれていく。

横山に期待度の高い演出がくる。


「おい、熱いのきたぞ。これ来るんじゃないか?」

「おお、これはあるかもしれないな」


ピキーンという音が鳴り響き、数字が三つそろってフィーバーの文字。


「よし、今日は勝つからな」


横山は連チャンが続くが、俺の方はまるで当たる気配がない。

こりゃだめかな。


そして横山の連チャンも終わって店を出た。


「いやー、なんとか三万円プラスだった。作戦通りだ。やったぜ」

「いつものパターンで飯食いに行くか?」

「もちろんだ。そう言いたいが、その前に俺からの最後の授業だ。これを受け取れ」


横山から白い封筒を渡された。


「なんだ、これは?」

「開けてみろ」


封筒を開けると中には、十万円が入っていた。


「ええ、十万円?」

「お前が俺に報酬で渡した十万円、そのまんま入っている。これを使って彼女を幸せにできるように使え。それでどう使ったか報告しろ。まあ期限は半年以内にしようか」

「ええ!?なんだよ、それ」

「お前は俺に十万円払ってでも本気で彼女を作る方法を教えて欲しいと思った。だから俺に十万円払った。ただチャラチャラ遊んできただけの俺のつまらない人生経験に対して、十万円も価値をつけて金を出してくれたのが嬉しかった。普通なら十万円なんて出さないだろ。なのにお前は出した。一種のギャンブルだよな。だから俺は最初から決めていた。彼女ができるまでお前の覚悟の十万円を俺が預かっておいて、彼女ができたらちゃんと返してやろうと。お前から彼女ができたと聞いていたから今日、金を持ってきた。まあそれだけだな」

「いいのか?結局タダで色々教えてもらったってことだぞ?」


横山は少し考えるような恰好で言った。


「んー、じゃああれだな。今日は俺がパチンコで勝ったからいつもなら俺が飯奢るところだけど、今日は例外って事で逆に飯奢ってくれよ。それでいい」

「わかったよ」

「焼き肉が良いな。肉だ、肉。食べ放題とかでいいぞ」

「くそー、お前。ちょっと高いやつ言いやがって」

「なはははは。まあいいじゃねぇか」

「まあいいよ」

「よし、そうと決まったら行こうぜ」


そして焼肉屋に着いて俺達は、肉を食べまくった。


「いやー、やっぱさー、奢ってもらって食う焼肉は最高だな。美味い!ほら、お前も食えよ。食べ放題なんだから食いまくって元取らなきゃ損だぞ」

「ああ、そうだな」

「今日はお前に彼女ができた祝いだ。よーし、食うぞ!!飲むぞ!ビール注文するか。お前も飲むだろ?」

「ああ、頼む」


その日、初めてパチンコで勝った方が飯を奢るという決まり事の例外が起こった。

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