第5話 告白
ゲームセンターに行く日が決まった。
事前に風神雷神のフィギュアが入荷されるゲームセンターを下調べしてあったので、そこに行くことにした。
待ち合わせの十分前に到着して、木下さんが来るのを待っていた。
「こんにちは」
今日は待ち合わせの時間丁度くらいに木下さんがきて声をかけてきた。
「それじゃ、行きましょうか」
「はい」
ゲームセンターなら俺のテリトリーだ。
ゲームなら俺の得意分野だ。
仕事終わりとか休日は、ゲームばかりしている俺を舐めるなよ。
早速店内に入って、風神雷神のフィギュアを探す。
「あっ、ありましたね」
風神雷神の風神と雷神の二種類のフィギュアが見える。
「うわー、難しそう……。こんなの捕れそうにないですー」
「ああ、大丈夫ですよ。まあ見てて下さい」
百円玉を入れてボタンを押して横のアームを操作し、さらに奥行きのアームを操作してタイミングよく止める。
「こんなもんかな」
クレーンが下降し、アームが開く。
フィギュアを掴もうとする。
しかし左側すぎる為、箱がくるっと横を向いてしまった。
「あー、おしいですねー。もうちょっとで掴めたのに」
「いえ、これでいいんです。これが仕込みです」
「えっ?」
「わざと横に向けるように狙ったんです。次で獲れますよ」
さらに百円玉を入れる。
ボタンを押して横のアームを操作し、さらに奥行きのアームを操作する。
今度はがっちりとフィギュアの入った箱を掴んだ。
そして景品の落とし口へとそのまま持っていき、ストンッと落ちて風神のフィギュアをゲットした。
「ええー、凄い!!」
「この手のタイプは、まず箱の向きを変えてやるのがポイントなんです」
「神業ですね。こんなに簡単に獲っちゃうなんて」
「次は雷神のフィギュア獲りますね」
風神と雷神の二種類のフィギュアを獲って、木下さんに渡した。
「はい、どうぞ。風神と雷神です」
「ええ、もらってもいいんですか?」
「はい。今日はその為にここに来ましたから」
「うわー、本当にありがとうございます」
「他にも何か欲しい景品ありますか?よかったら獲りますよ」
「うわー、迷いますね。ちょっと色々見て回ってもいいですか?」
「はい、色々見ましょう。欲しいのあったら言ってください」
そして犬のキャラクターのぬいぐるみ、パンダのクッションを獲った。
景品が獲れる度に嬉しそうな木下さんを見ていると、なんだかこっちも嬉しくなってきた。
こんなに喜んでくれるとは思わなかった。
やっぱり俺は、木下さんの事が本当に好きかもしれない。
こんな彼女がいると、とても楽しいだろうな。
俺はそう思った。
ゲームセンターで遊んだ後、ご飯を食べに行くことになった。
横山が教えてくれた雰囲気の良い洋食のレストランへと行ってみることにした。
横山が言うには、ハンバーグが絶品らしい。
店内は、かなり雰囲気が良くて清潔感が漂う店だった。
また良さそうな店を教えてもらった。
「ここも友達に教えてもらったお店なんですけど、ハンバーグが凄く美味しいらしいです。俺はハンバーグ頼んでみようと思います」
「わあ、色々メニューがあって迷いますね。じゃあ私もハンバーグにしてみようかな」
二人ともハンバーグを注文した。
待っている間、色々な話をした。
兄弟はいるのかとか友達の話だとか。
でもまあ結局、ほとんどがゲームやアニメの話になったのだけど。
お待たせしましたという店員の声が聞こえ、美味しそうなハンバーグが運ばれてきた。
「わあ、美味しそうですね」
「良い匂いですね。早速食べましょう」
ハンバーグを口の中に運ぶ。
「おお、美味しい」
「凄く柔らかくて肉汁が出てきますね。凄く美味しいです」
ハンバーグを堪能して店を出た。
頭の中で横山の言葉がずっと残っていた。
早く告白しろよという言葉だ。
急に心臓がドキドキしてきた。
「あの……木下さん」
「はい?」
「俺……その……木下さんの事が好きです。付き合って下さい」
言ってしまった。
少し間が空いた。
この間が永遠に続くのではないかと思うくらい長く感じた。
そして木下さんの口が開いた。
「よろしくお願いします」
えっ……?
い、今なんて言った?
俺の聞き間違いじゃないのか?
「ええ!?いいんですか?」
「はい。私も矢口さんと一緒にいて、とても楽しいんです」
「凄く嬉しいです。俺、今まで彼女とかできたことなくて……。それで付き合うとかって初めてなんですけど、それでもいいですか?」
「大丈夫ですよ」
「よ、よろしくお願いします」
「じゃあもうお互い、敬語とかやめましょうよ」
「そ、そうだね……」
「うん」
木下さんは次の日、仕事だったので、早めに解散となった。
今だに信じられない。
俺に彼女ができるなんて……。
本当に夢じゃないよな?
そうだ、横山。
横山に知らせないと。
横山に電話をかけた。
「おう、どうしたぁ?」
「木下さんに告白して付き合うことになった」
「そうか、告白は成功したのか。つまり彼女ができたってことか」
「そうだよ。横山、本当にお前のおかげだよ。ありがとう」
「せっかくできた彼女だ。お前なんかと付き合ってやってもいいっていう女だ。大事にしろよ」
「もちろんだ」
「今度の日曜日、時間あるか?」
「大丈夫だけど?」
「パチンコ行かね?」
「まあ別にいいけど」
「それじゃ、また日曜日な」
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