第2話 授業開始
俺のシフトの休みの日を教えるように横山から言われてたので連絡した。
金曜日の夜、横山の仕事終わりの日に会う事になった。
記念すべき一回目の授業なんだそうだ。
夜七時にラックスで待ち合わせた。
ラックスは、様々な専門店が入っている大型商業施設だ。
「よお」
六時五十分に着くと、横山は相変わらず先に来ていた。
時間にはきっちりした奴だ。
「よお。早いな。やる気十分だな」
「当たり前だ。十万もお前に払ったんだからな」
「任せとけって。ただし彼女できるかどうかは、お前のやる気次第だぞ」
「はぁ?ふざけんなよ。ちゃんと彼女できるまで責任持てよ」
「お前な。考えてもみろ。例えば英語をマスターしたい奴がいるとする。そいつは良い英語教材を買った。でもやる気がなくて勉強しなかったらどうだ?英語をマスターできると思うか?」
「……まあ無理だな」
「そういうことだよ。俺は惜しみなく教材の提供はしてやる。勉強するもしないもお前次第だ」
全く……。
口の上手い奴だ。
しかし納得できてしまうのだから悔しい。
こいつ、営業職の仕事とかやらせたら、かなり向いてるんじゃないだろうか。
「わかったよ。お前を信じるし、勉強するから。それでなんでラックスなんだよ」
「いやー、服見たくてさ。なんか良いのあるかなーって。とりあえず行こうぜ」
「はぁ?お前の服買うのに付き合わす気か」
様々な店が並ぶ前を通り過ぎていって、ひとつの店の前で横山が立ち止まる。
「おっ、ちょっとこの店行こうぜ」
「お前、服のサイズは?」
「Lだけど」
「よし、これ試着してみろ。後は、これとこれもだ」
「ええ……。俺?」
訳が分からないまま、何着か服を試着させられた。
「んー、これとこれだな。後は……これとこれも着てみろ」
「ええ……。俺こういうのは着た事ないんだけど……」
「馬鹿。同じような服ばっか着ても意味ないだろ。ほら、早く試着しろよ」
結局、色々な店を回って合計十着の服を買わされた。
結構な出費だ。
「いやー、結構買ったな。自分の金じゃなくて好きに服買うって楽しいー」
「お前な……。俺にこんなに服買わせてどうすんだよ。ってか買わす前に色々説明しろよ」
「とりあえずお前は服がダサい」
「うぐっ……」
「手っ取り早い話、見た目からマシにするべきだ。今すぐできることからやる。今日買った服、十種類だ。その十種類、とりあえず着回せ。少しはマシになるだろ。いいか、見た目良い奴と悪い奴、付き合うならどっちがいいと思う?まあ聞くまでもないよな」
「いや、でも俺イケメンじゃないし。お洒落してもな……」
「スーツ着てたら誰でもそこそこイケメンに見えてくるだろ。服ってのは大事だ。服装が変わるだけで印象が変わる」
「……とりあえず見た目から入れって事か」
「そういう事。後な、髪型もだ。時間ある時に今日買った服着て美容院に行って、お任せでお願いしますって言って髪切ってもらってこい。髪型も変えてもらってこい。次会うまでの宿題な」
「ええー、髪型なんて変えた事ないよ。大丈夫かな……。めっちゃ不安だよ」
「美容師舐めんな。ヘアースタイルのプロだぞ。プロにお世話になってこい」
「う、うーん……」
「よし、まだ時間あるな。次いくぞ。本屋だ」
「本屋?なんで?」
「俺の読みたい漫画があるから」
「はぁ……?」
本屋へと向かった。
横山は自分の買いたい漫画を手に取ったら、すぐにレジへ行って会計を済ませてきた。
「お前は、ついでになんか買わないの?」
「いや、俺は別に何も」
「はぁ……。全く。お前な、自分で勉強するって言ったよな」
「言った」
「頭を使え、頭を。ここはどこだ?」
「本屋」
「本は知識の宝庫だろうが。そこは迷わず男性ファッション誌のコーナーへ向かえよ」
「あー……ファッション誌を買って服装の勉強するって事か」
「そうだよ。後な、髪型も参考になるの多いから」
「へえー、なるほど」
「初授業だからここまで丁寧に言ってやったけど、後は自分で考えろよ。もっと自分で吸収しようとしろ」
「お、おう」
俺は生まれて初めてファッション誌を買った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます