たからもの

 あれから、かなりの時間が経って私はあともう少しで、大人になる年齢になった。

 この歳になってあの出来事に関して少し、分かったことがある。

 それは、もしかすると、けいちゃんはホタルだったかもしれないということ。

 彼女の名前について、ずっと考えていたことがある。


 彼女は『けい』と名乗っていた、

 まだ小さかったあの頃の私は、平仮名と、少しの漢字しか知らなかったから......どんな漢字を使うかなんて興味も無かったし、考えてすらいなかった。

 そしてここからはあくまで、私の推測になるけれど、『けい』という名前に使われている漢字は『蛍』だったんじゃないか?ということ。


「それだけで、どうやって不思議な話とむすびつけるんだ?」

 大人になって、いい意味で色々な方向に考えが回るようになったけれど......反対に深く考えすぎるようにもなった。


「けど.......まぁ、いっか。」

 そう、ほんとうにこれでいい。子どもの頃の思い出なんて、不思議なことが山ほどあった方が幸せになれる気がするから。

 そして、大人になってからもその不思議な出来事を少しでも笑顔になれたら、それでいいと思う。


「本当は大人になってなってからも会えた方が嬉しいけどね。」

 私は一人暮らしをしている自分の部屋の窓を開けて、ぼんやりとそんなことを考えていた。

 これからどんなことが起こっても、あの夏の出来事は絶対に忘れない私にとっての宝物なのには変わらない。


「また会いたいね、けいちゃん。」

 私は夏の夜空に向かってこう呟いて部屋のカーテンを閉めた。

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夏の思い出。 七瀬モカᕱ⑅ᕱ @CloveR072

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