あれから。

 それからのことはよく覚えていない。私が覚えていることは....けいちゃんの周りをたくさんのホタルたちが飛んでいたこと。

 とても綺麗で眩しかった、私はあまりに眩しかったから目を閉じてしまった。

 そして、次に目を開けると......


『あれ......?』

 橋を渡ったところにいて遠くから、母の声が聞こえた。

『急にいなくなるからびっくりしたよ....。』なんてすごく叱られた。

 家に帰って、祖母や母に今日あった出来事を一から話してみたけれど『変な夢でも見たんじゃないのか。』みんな信じてくれなかった。


『やっぱり、夢か.......』

 私は本当に夢を見ていたんだろうか。でもけいちゃんの|身体は透けていなかったから幽霊ではなさそうだし、やっぱり夢なんだろう。


『はぁ〜あ、もっと話したかったなぁ.......』

 ホタルを見に行った夜は、とても疲れているはずなのになかなか眠れなかった。

 ✱✱✱

 次の日の夜に、私はもう一度あの河川敷に行った。昨日起こったことが夢かどうか、確かめる為に。

 私は昨日と同じように、対岸に渡れる橋を通ってけいちゃんと出会った場所に向かった。

 けれど、今日はけいちゃんは現れなかった。


『本当に昨日、帰っちゃったのかな......。』

 私はそんなことを呟いて、ただぼーっと.......河川敷の景色を眺めた。


『もう一回、会いたかったなぁ......』

 私は明日の夕方にはこの町を出て家に帰らないと行けない、それまでにどうにかこの不思議な出来事の理由を自分の中で消化しておきたかった。


『もう遅いし、帰ろ。』

 私はモヤモヤした気持ちを抱えたまま、祖母の家に帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る