ホタルと淡い月
けいちゃんを追いかけて、どのくらいの時間がたっただろう。
急に前から聞こえていた足音が、消えた。
けいちゃんが立ち止まった場所は広い空き地のような場所だった。
『ここだ......』
私はけいちゃんがなにをいっているのか分からなかった。あたりは真っ暗で何も見えない、けど何故かけいちゃんはワクワクしているような様子で『もうすぐだ....』と呟いた。
私が質問しても、けいちゃんは『まだ、ないしょ。』と教えてくれなかった。
『ねぇ、ほんとにどうしたの?』
私はしばらく何も見えない場所でぼーっと待つことしかできなかった。
『あ、ねぇ見て!』
けいちゃんの声で、私ははっとする。さっきまで真っ暗だったこの場所にたくさんのホタルが飛んでいた。
『すごいでしょ、帰る前にぜったい見せたかったんだ。わたしのこと見つけてくれたの、あおいちゃんがはじめてだから。』
けいちゃんはまた不思議なことを言った
私がその訳を尋ねると、悲しそうに笑って『もうすぐ、分かるよ』と言うだけだった。
私はこの後起こることを、まだ知らない。
✱✱✱
たくさんのホタルたちが現れて、少ししたあたりから、けいちゃんはしきりに空を気にするようになった。あの時の私はホタルに夢中だったからあまり気にしていなかったけれど、今思えばもう少し話しておけばよかったなと思う。
✱✱✱
『もう、行かなきゃ.......。』
けいちゃんは空を見上げたままそう言った。
今は夜だ、こんな時にどこかに行こうとするのは危ない気がした。
『あぶないよ?どこに行くの?まだ夜だよ?』
私がそう言ってもけいちゃんは空を見上げたままだった。
空には淡い月が出ていた。
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