おはなし。

『けいちゃん......かわいい名前だね。』なんて私が言うと女の子は顔をしかめて、『かわいくなんかないよ。すぐ男の子とまちがえられるんだもん.....』と言った。

 女の子.....けいちゃんが自己紹介をしてくれたので、私も自己紹介をして握手する。毎年この町に来ているけれど、友達ができたの はこの時が初めてだった。


『ねぇ、けいちゃん。けいちゃんはこの町にすんでるの?』

私はもう一つ、気になっていたことを聞いた。けいちゃんはまた可愛いらしく笑って首を振った。


『山の、ずぅーっとむこうにすんでるの。』

 山の向こう.....ここよりさらに離れた場所なのだろうか。私は立て続けに質問する。


『そのお山のむこうはどんなところ?』

『ホタルとか、たくさんいるの??』

『川遊びとか、できるの??』


 私が、あまりにもたくさん質問をするものだから、けいちゃんは困った顔をして『あの.....もっとゆっくりしゃべって?』と言った。

 ✱✱✱

 しばらく話していて、分かったことがある。それは、二人の性格に関することだ。

 自分の性格が【活発】だとするならけいちゃんの性格は【大人しい】という言葉がぴったりハマる女の子だった。


『あおいちゃんは、いつお家に帰るの?』

 不意に、けいちゃんがこんなことをきいてきた。


『あさって、けいちゃんは?』

 私も同じことを聞いてみた。するとけいちゃんはニコッと笑って『もうすぐ』と答えた。

 けいちゃんのその言葉を私は少し、不思議に思った。


『でも、帰る前に.......いきたいところがあるの........』

 そう言ってけいちゃんはひとりで、暗い夜道を歩き始めた。


『待ってどこいくの??』

 私がそう聞いてもけいちゃんは歩くのを辞めるどころか、どんどんスピードを上げて歩いていった。


『もうすぐ帰るんなら、ここにいた方がいいよ!?』

 私はけいちゃんの後を追いかけて行った。

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