第六十六髪 立ち上がれ 無残に散った 英霊よ
「ああ、もちろん。
「それは
そういえば、カプラ牧場でその話を聞いていた。
いわゆる言い伝えの
「
「ああ、毛に水を含むと、
「その通り。彼女らは最強の盾となる。それは言い
ルピカは
「主殿がいない間、
大巫女はリュックから大小二つの
一つは大きなペットボトルほどのサイズがあり、そしてもう一つは、まるで栄養ドリンク程度の
「大きな方は
大巫女が
クリームは気持ちが良いのか、「フモ、フモモー」と
「触ってみて下され」
「どれどれ」
試しに背中に触れてみると、ダイヤモンドでもあっさり打ち砕けるのでは、と思われるほどの硬さを指先に感じる。
「凄まじいな……」
「ええ、まず予定地点へは、我とカプラでやり遂げます。そしてこちらの小瓶こそが主殿に最後の力を与えるものです」
「これは……」
一見して、大層なものには見えない。
「それは、ミニエリフサーでございます」
「なっ! これがあのエリフサーなのか!」
以前の大巫女との話が思い起こされる。
曰く、『望む最も良い姿を手にすることが出来る』
つまり。
「どうか、お飲みになってください」
慎太郎はゴクリ、と
右手で
まさに栄養ドリンクのようで、実に
だが、それが喉を通り身体に入ると、突然、慎太郎の心臓が大きく高鳴る。
ドクン。
激しく鳴動する心クン。
身体が熱い。
ドクン、ドクン、ドクン。
慎太郎は願う。
私の願いは、望みは、この状況を切り抜けるために。
髪が、欲しい。
それに応じるように慎太郎の身体は輝き始め、やがて虹色の光が全身をくまなく包み込む。
そして。
「慎太郎様……!」
「フモー? モーッ!」
「大神官様……、ぷっ」
「おお、主殿。なんとも勇ましい姿ではないですか」
大巫女が、クリームが、クオーレが、ルピカが声を上げる。
おそるおそるその部分を触ると、つるんとした感覚が一切無くなっており、その代わりに夢にまで見た、あの懐かしい感覚が帰ってきていた。
そっと、大巫女がいつもの手鏡を渡してくれる。
おそるおそる、だが、確信をもって、自分の顔を
四十六歳男の顔はいつも通りの
だが、その眉から上。
本来そこには、申し訳程度に残された老いた
だが、今は違う。
失ったはずの数多くの
慎太郎は太くたくましい、若かりし頃の豊かな黒髪を取り戻していた。
「みんな……ありがとう」
慎太郎は背を向けたまま、一行に声をかける。
少しだけ
「ゲハハ……、整ったようじゃな。さて、大神官クン。
「な、泣いてなんかいないぞ! さあ、皆、やろう!」
往年の頭部を取り戻し、すっかり自信がみなぎった慎太郎は、エルの言葉を受けて、皆に
エルはニヤリと笑うと、ルピカへ軽く目で合図をした。
「さて、久しぶりに共闘じゃな。――行くぞ、
そう言うや
エルは数百メートル先にいる黒き神の足元へ
すると、音もなく数メートルはあろうかという長大な剣が出現し、エルはにやり、と笑みを浮かべると。
目にも止まらぬ速度で身体を一回転させる。
と、同時に黒き神の両脚は再び完全に分かたれ、先程と同じようにバランスを
そのタイミングを見計らい、クリームを首に乗せたルピカが全速力で地を駆け、角度をつけ宙へ飛ぶ。
「フモォォォォォォォゥ!」
これまで聞いた中で、最も力強いカプラの
そして、その背の部分は黒き神のみぞおちに直撃し、そのままの勢いで吹き飛ばす。大きく
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