第8話

「ふーくん、もふ走り回らないように囲ったからそっちから入って〜!」

おぉ、囲われてる…。動物園のふれあい広場みたいって、それは言い過ぎか。


「おぅ、すごいな。これ」


「もふが逃げちゃったら危ないからってお父さんが買ってきたの〜」


「へー、これなら安心して走れそうだな」


「よーし、私が抱っこするから撫でる?」


「おぅ、よろしく」

かわいいもふをかわいいさくらが抱っこしている…。どっちを撫でれば…何言ってんだ、俺は。


「はい、ふーくん! もふ撫でてあげて〜!」


「失礼しまーす。もふ〜、かわいいなぁ」


「でしょ〜! 背中とかも撫でてあげてー! 尻尾はだめね!」


「おぉ、ふわっふわだなぁ。お菓子はいつあげるんだ?」


「毎日ではなくて、時間とか決めてるわけじゃないけど。さっきご飯食べてたから食べないかもな〜」


「なるほどなぁ」


「あ、あとね。触りすぎは注意だと思うから、ふーくん初対面だしね〜。ちょっと1人で走っててもらお〜。後でお洋服着せてみようね!」


「おぅ、じゃあ今から何する?」

もふに会いに来ただけと思っていたが…さくらは、俺とお家デートって思っててくれたってことか? まぁ、お母さんもいないしな。でも、お家デートって…何すんだ? DVD見て…いい感じのとこで手を握り…見終わったらキス…。


「ふーくん、ふーくん?? 大丈夫?l

おぉぉ。いや、俺は一般的にこんなか? と思っただけだ。なんだ今の乙女チックな妄想は!


「おぅ、ごめん。何しようかな〜とか考えてたわ」

…ってか、俺手も繋いでないけど付き合ってるって言えるのか?


「だからー、ゲーム…しないの?」

あ、そう言ってたのか。うん、さくら今までと変わらないな…。



「わー! 負けた〜!!」


「俺の勝ち〜、さくらもっと練習するんだな」


「もっかいー! 次は負けないもん!!」

楽しいし、かわいい…けど。さくら…このゲームタイムはいつまで続くんだ? あ、いつものゲームタイムだって今はお家デートと言うことになるのか?? 世のカップルさんだってきっとずっとイチャイチャしてるわけじゃないもんな。うん、これだってカップルっぽいことだな、きっと。


「あ」

考え事してたら負けた!


「勝ったー! うふふ、私だって強くなったんだぞ〜」


「あはは、そうかもな。そういえば、もうもふ家にいるな」


「結構前から音しなかったもんね。寝てるかな〜。また出てきたらお洋服着せる?」


「そうだな」

じゃあもうちょっとゲームかな。


「そろそろ疲れたし、私たちが先にお菓子タイムでもする〜?」


「あはは、小学校の頃の夏休みみてぇ。お菓子タイムしようぜ」


「えへへー。私お家デートとか何すればいいか、わかんなかったんだもーん」

…さくらがお家デートって! 意識してたの俺だけじゃなかったのかー!!


「いや、俺もわかんねぇし。お菓子タイムしようぜ」


俺たちは俺たちのペースで進めばいいんだ。今は友達の延長の距離感がちょうどいい。

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