第7話

 気がつくとまた燃料会館の前へ立っていた。

 すぐに斎花のも元へ走った。


 あの不思議な経験のせいかもしれないが、走っている間、とても冷静でいられた。まだ何の計画もないが、斎花のところへ行かないといけないと心の中で信じていた。


   前へ進んでください


 あの時、斎花が最後に言った言葉が鮮明に聞こえた。


 「前へ…」掠れた声で言った。


 チック チッ チック 


 橋を渡り、走り続けた。

 道を行き交う人々に意識を向けず、斎花を探し続けた。


 チック チッ チッ


 針の音が強くなるが、空の上にB-29の音も微か聞こえた。

 時間が残りわずかだと再び教えられた。


 チッッ チック チッ


斎花の後ろ姿が見えた走る速度が緩みそうになったが、歪な時計の音が聞こえ、速度を変えず、走り続けた。


 チ チク チッ


 「斎花!」 


 彼女の名前を叫ぶと同時にあの爆弾が光を放った。斎花は後ろを振り向き、俺がいることに驚いていた。走るのを止めず、彼女のもとへ行った。

 「前へ進めェェェエエエ!」


 斎花を抱擁しながら、大声で祈った。


 チチッ チッチチック チッッチ チッ


 炎は俺と斎花を通り抜き、爆発の威力は斎花の髪を揺らすだけだった。歪な高音が聞こえたが、見たものと比べ、耐えられるものだった。

 一瞬で燃え散る人々と消滅する建物。高音よりひどい、そう思っていたが、よく聞くと人の声だった。

 耳を抜き取る衝動にかけられそうになった

 あの高音は人の叫びと爆発音が混じった音だ。


 チッチチチヂヂヂ ヂ ヂ ヂ チック



 パチン


 

 硝子の音が割れた音がした途端、彼女の驚いた顔を一瞬見た後に強烈な頭痛と暗闇に襲われた。

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