第18話 入浴タイム。

 ——ちゃぷん。


 一護君と入れ替わりでお風呂。体と頭を洗い、お湯に浸かると一日の疲れが取れていくのが分かる。


「はふぅぅぅ」


 気持ちよくてついつい声が漏れてしまう。一人暮らしの時はお湯に浸かる事はなかった。寒い時もストーブを焚きタライでゴシゴシしていただけ。


 改めて思う。お風呂でお湯に浸かるって贅沢だぁ。


 一護君が『美希さんゆっくり入ってきてね』と言ってくれた。毎日言ってくれる。一護君は優しい。でも私的には一緒に入りたいよ。


 一護君の家に住むようになってから毎日が幸せ。お母様も一護君も凄く優しい。ご飯も美味しい。


 凛子ちゃんが今日の夜に遊びに来ると言ってた。もう来てるかな? 凛子ちゃんも良い人だよね。小学生の頃の人達とは大違いだよ。


 小学高学年の頃、同じクラスの女の子が好きな男の子に告白したら『僕は美希ちゃんが好き』と言われて振られて、その逆恨みでトイレに呼び出された。


『貧乏人のくせにちょっと可愛いからって調子にのるな』と言われ、それからいろいろと嫌がらせを受けた。


 それがトラウマで友達は必要ない、一人でいい、一人がいいと思うようになった。もう傷つきたくなかった。だけど本当に一人になった時、一人は嫌と思った。


 あの日、あの時、公園で一護君が現れなかったら、私は今頃なにをしていたんだろう。生きていたのさえ分からない。悪い人達に捕まっていたのかもしれない。考えただけでゾッとする。


 う〜。今日は一人で寝たくないな。一護君の所に行こうかな。一緒に寝てくれるかな。寝てくれるよね。


 ……私、弱くなったなぁ……。


 フゥゥ。あちゅい。のぼせてきた。頭がクラクラする。お風呂は気持ちいいけど限界だぁ。


 お風呂からあがると、畳の部屋から声が聞こえた。覗くと凛子ちゃんが来ていた。お母様に絡まれている。かなり酔っ払っている。


 しばらく三人でお母様の相手をして、部屋に連れて行きベッドに寝かせた。そして畳の部屋に戻り三人で雑談をした。


 午後十一時になると凛子ちゃんは帰った。お隣さんだけど夜道は危ないから一護君がついて行った。

 

「ただいま。そろそろ寝よっか」


 一護君が優しく言った。私は『今日は一緒に寝たいな』と言うと『うん。いいよ』と言って微笑んでくれた。


 ガスの元栓が閉まっているか確認して、部屋の電気を消した。


 そして一護君の部屋に行って一つのベットに二人で寝た。私は一護君の胸に顔を埋め甘えた。


 優しく私の頭を撫でる一護君。自然と顔がニヤけてしまう。


「美希さん大好きだよ」


 私は顔をあげ一護君を見る。部屋は薄暗いけど顔が近いからよく見える。


「私も一護君のこと大好き」


『チュ』っと私から一瞬だけ唇を重ねた。


「美希さんエッチだね」


「私をエッチな女の子にしたのは誰ですか?」


「俺……かな」


「正解。だから責任をとってずっとそばにいてね」


「もちろんずっとそばにいるよ。誰にも渡すつもりはないよ」


 心地よい柔らかな声。嬉しくてニコッと微笑むと一護君はギュッと私を抱きしめた——。

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