私だけが泳げなかった(Twitter300字SS)

伴美砂都

私だけが泳げなかった

 小学生のころ、プールの授業で25メートル泳げなかった人には、夏休みに補習があった。毎年それに行っていた。最後の日にはなんとか泳げるようになるのに、次の年にはどうしてか、また泳げなくなっていた。

 六年生の補習で初めて、最後の日まで泳げなかった。休み明けに配られた学級だよりには、「やったあ!全員25メートル泳げた!」の文字が踊っていた。


 「私!!まだ泳げてないのに!!!」


 回収だ、と先生が大きな声で言った。配り直された学級だよりは慌てたのか誤字があった。「やったあ!25メートル泳!」

 おんおんと泣き伏した私に、隣に座っていた子が小さく、うわあ、と言った声がどんなに嫌そうだったか、私はいまでもおぼえている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私だけが泳げなかった(Twitter300字SS) 伴美砂都 @misatovan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る