第844話 3歳はお疲れです

 今年も控えるよう通達はだしたもの多くの出店が店を並べていた。あっちもこっちも母娘ででフラフラと呼ばれるように行くと、お腹がぽんぽんになる。もちろん、アンジェラも同じのようで、お腹をさすりながら、ふぅっと息を吐いている。



「アンナもアンジーも食べすぎだよ……同じような格好して……」



 振り向くとジョージアが呆れたように頭を振っていた。同じようにジョージも目をパチクリしているあたり、ジョージアと同じなのだろう。



「ちょっと、食べ過ぎたね?」

「ねぇ?」

「二人とも……もうすぐ、始まりの夜会もあるのに……アンナはドレス着れなくなってもしらないからね?」

「……ドレスが着れないとか、恐怖過ぎる!」

「恐怖って、ドレスが着れないくらい。ちょっと肉付きがいいくらいのほうがアンナは可愛いからいいよ?」

「……違うんです!ドレスが着れないっていうことはですね?ナタリーに……」

「ナタリーに?……あぁ、なるほど。体型の維持をしていないと、ナタリーに叱られるということか。なんだか、それって」

「それ以上は言わないでください!私、今日はたくさん食べたので、明日は、しっかり運動をしま……」

「あっ、アンナリーゼ様!」

「セバス?」

「何?」

「明日は、今日の関係の報告をしないといけないので、執務室にいてくださいね!」



 セバスに声をかけられ、私はジョージアと顔を見合わせる。



「アンナは早起きをして、運動だね。俺は、付き合わないから……頑張って!」



 満面の笑みで応援されると、ツラい。



「えっと……、わかりました。明日は、執務室で今日の報告ね。……早起きは得意だから、大乗だよ。運動もしっかり……レオの訓練もあるからね」



 明後日の方向を見ながら、食べ過ぎたお腹をさすっておく。



「……あぁ、アンジーが眠そうだね。そろそろ、遊び疲れたかなぁ?」

「本当ですね」



 さっきまで私と同じようにお腹をさすっていたのだが、すでにこっくりこっくりと始めてしまった。



「今日は、うちの両親とも歩き回ってはしゃいでいたからね。抱っこするよ」

「お願いしますね。ジョージは、お願いできるかな?」

「もちろん!ジョージは、眠くなったりしていない?」

「大丈夫!」



 そういった次の瞬間には大きなあくびをしている。



「抱っこしてあげるわ」

「うぅん、僕、歩けるから大丈夫だよ!」

「じゃあ、手を繋ぎましょう!お部屋まで、一緒に!」



 差し出された左手をギュっと握ると握り返してくる。セバスが後をついてきてくれた。



「ダメそうだったら、僕がおんぶするから」

「ありがとう、セバス。そのときは、お願いするわ!」



 こっそり耳打ちしてくれているので、ジョージには聞こえていないが、セバスの気遣いを嬉しく思う。



「そういえば、レオたちもお祭りには参加しているの?」

「えぇ、していましたよ!リアンたちがネイト様を連れてノクトさんと一緒に見て回っているはずです」

「そっか。ネイトとも一緒に回りたかったけど……」

「今年は、仕方がありません。あんなことがあったばかりなので、分散する形でしか叶わなかったのですから」

「責めているわけじゃないのよ!」



 ニコッと笑うと、セバスは頷いた。ネイトはまだ、それほど、長い時間出歩くことは、難しい。アンジェラほど、体力が有り余っているわけではないようで、少々大人しいくらいなのだ。



「アンナちゃん!」

「あら、おじさん!どうかしたの?」

「今日は楽しかったよ!主役は、すっかり夢の世界に向かったみたいだね?」

「そうなの!アンジェラは、はしゃぎすぎたみたいで……ふだん、屋敷ばかりだから、こんなふうに出てこれるのが嬉しいのよ!」

「そうかいそうかい。その子もいずれ、この領地の領主だ。アンナちゃんみたいに、領地を駆け巡ってくれるような子になると、いいなぁって、みんなで言っているんだ」

「あら、それは、大変!私もまだまだ、屋敷を飛び出して出かけてしまうから……アンジェラと一緒にフラフラと領地を旅しているかもしれないわね!」

「それは、素敵だね!そんなときは、ぜひ、うちの村にもよっておくれよ!」



 いつの間にか、両側にあるお店のおじさんおばさんたちが、楽しそうにおしゃべりに加わってくる。



「そういえば、まだ、言っていなかった。主役は眠ってしまっているが……アンジェラお嬢様、ジョージお坊ちゃま、お誕生日おめでとうございます!」

「「「「「おめでとう」さん」ございます!」」



 おじさんから始まり、みなが二人の誕生日を祝ってくれる言葉を言ってくれる。



「ごめんなさいね、アンジェラはすでに眠っちゃってて……」

「いいですよ!私たちも言うのが遅れました。お二人の誕生日を祝う祭りなのですから、回ってくれているときに言わないといけなかったのです。健やかにこの1年もお育ちされること、領民一同、願っています。素敵な1年になりますように……」

「ジョージ、お礼を」



 背中を少しだけ押してあげると、こちらを見上げてくるので頷いた。



「……ありがとうございます」

「大きくなられましたね」

「本当さね?」



 みながアンジェラとジョージの成長を喜んでくれ、私とジョージアも頷きあった。お祭りは、まだ続く。夜まであるので、アンジェラたちを寝かして、また、祭りに参加することになるだろう。


 幸せそうに眠るアンジェラを子ども部屋で寝かせ、ジョージもベッドへ誘うと、あっという間に眠ってしまった。

 よっぽど疲れていたのかと、二人の頭を撫で、おやすみといい部屋を出た。

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