第462話 再度露店外へ、子どもたちと共に……
「アンナ様……」
「どうしたの?リアン」
「ママ?」
「あら、起きたの?いらっしゃい、ジョージ。それと……アンジェラもいるの
かしら?」
ドアの向こうからひょこっと顔を出したジョージとそのまた後ろから顔を覗かせているアンジェラ。
この二人は、全くの他人であるにも関わらず、たまに双子のようなときがある。
今はまさにそうで、手を繋いで私の方へ走ってくる。
「ママ、おはよう!」
「おはよう、ジョージ。おはよう、アンジェラ」
二人の頭を撫でると嬉しそうにしている顔を見ると私も嬉しくなる。
「お菓子食べたい」
「お菓子?」
うんと頷くアンジェラはお腹がすいたのだろう。いつものようにお腹をさすっている。
ジョージは、そんなアンジェラをじっと見て私と同じように頭をポンポンとしていた。そんな姿が微笑ましい。
この二人には、幸せな未来を与えてあげたい……『予知夢』どおりなら、アンジェラは、三国の女王となり、苦労することにはなるだろう。
仲間がいるから、苦労もあるだろうけど、この子ならやって行けるだろう。
何より、頼りになりそうな仲間がいるから、大丈夫だと思えた。
ジョージに関して、『予知夢』が見れない。何故か、ジョージだけが私の『予知夢』にあらわれないのだ。
だから、ずっと心配している……この子の未来を。
頭を撫でるとママと笑うこの黒髪黒目の我が子の行く先がどうか幸せであってほしい……自分が生んだ子どもたちより願ってしまう。
ただでさえ、母のソフィアもいなければ、父にも見放された子。
私たちの子どもとして育てているが……ジョージの幸せを願わない日はない。
見た感じ、優しい子に育って行っているのだ。これからもこのまま育って行ってほしい。
「よし!アンジェラもお腹すかせているし……」
と、言ったところで、今度はリアンが抱きかかえているネイトが泣いている。
「どうしたのかな?」
「お腹がすいたのだと思います」
「アンジーもう少しだけ待てる?」
コクンと頷くアンジェラに微笑むとネイトを私に渡してくれるリアン。
両脇に子どもたちが座って、ネイトのお食事をじっと見ている。
「ママ、アンもこうだった?」
私は驚いた。少し会話っぽいことをいうアンジェラに。
リアンを見上げると、成長されてますねというふうに微笑んでいた。
「そうね、アンジェラもこうやって大きくなったよ」
「僕も?」
「そうね、ジョージもそうね」
「僕もネイトみたいに?」
「そうよ、アンジェラもジョージもこうやってお母さんからの愛情で大きくなった
のよ。だから、二人とも、ネイトも大事にしてあげてね?私は、三人とも大好き
だから!」
「「うん」」
「ん、もういいみたいね。背中をさすってあげて……っと。うん、よしっと。
あっ!抱っこするための布ってなかった?」
「抱かれて行きますか?」
「うん、その方がいいかな?眠そうだし……」
抱っこなら私がとリアンがしてくれるようで、ネイトを抱いてくれる。
私は、アンジェラとジョージの手を取ると歩き始めた。
「先程の場所から、また歩き始めましょうかね?」
二人を連れて歩くと両手がふさがるので結構大変だった。
リアンもネイトをみてくれているので、お願いはなかなかしにくかった。
元居た場所まで歩いて行くと、そこにウィルやセバスが一団でいた。
「ウィル!」
目ざとく見つけたのは私ではなく、アンジェラ。
本当にウィルが大好きなようだ。
「おっお嬢が来たな?姫さん、一緒に回るか?ちっこいの二人もいると見て回れ
ないだろ?」
「うん、お願いしてもいい?」
おうよと言ったときにはすでにアンジェラはウィルに抱かれていた。
高い高いと喜んでいるが、下でミアが頬を膨らませている。
あぁ……ミアもウィルに甘えたかったよね、ごめんねと思いつつも預かってくれるウィルがいるのは助かったのでそっとしてしまった。
ウィルの空いている方の手をミアと呼んで手を繋いだことで少し改善されたようだが……この戦いはいつまで続くのだろうか?とクスっと笑ってしまう。
セバスも気づいたようで、苦笑いしている。
「アンナ様、僕もジョージ様と手を繋ぐよ。危ないからね!」
「レオ、ありがとう!」
ミアの隣にはセバスが並んで立っているので、誰かにぶつかることもないだろう。
いつだったか、ジョージアに双子は大変だよって言われたことを思い出したが、こうして子育てまで手伝ってくれる人がいるから、恵まれているなと感じる。
双子と言えば、エレーナだが……元気にしているだろうか?男女の双子を生んで育てているはずだ。仕事も旦那である侯爵と一緒にしていたはずだったので、少しだけ苦労がわかった。
エリザベスは、男の子二人の母になっていたからか、おしとやかさはなくなって逞しい母になっていたし……子どもがいるって、子どもだけでなく親も成長するのだなぁと感じる。
アンジェラの先程のことといい、私は基本領地を動き回っているから、ジョージアや友人、侍従任せっぱなしになっているのでなかなか自分の成長は感じられないが、子らの成長はとても嬉しい。
今日の誕生日会、皆に祝われて、喜んでいるのは何も子どもたちだけではない……私も元気に育っていく三人と二人をみれてやっぱり嬉しかった。
「そういえば、アンジェラはお腹をすかせていたのだったわ!何が食べたい?」
「芋!」
今朝食べた芋がよっぽど気に入ったのか、色気も何もない。
「芋か……美味かったよな?レオとミアもまた、芋食べるか?お嬢がご所望だから
今から行くけど?」
「お芋食べる!」
「父様、僕もお腹がすいてきました」
じゃあ!と目指すは芋の露店となった。
ただ、露店に着いた頃、おばさんが申し訳なさそうにしていた。
「ごめんね、もう、お芋は全部売れてしまったんだよ」
「そっか……違うのにしようか?」
しょぼんとしながら、アンジェラはお腹に手を当てている。
「アンジェラ、口を開けて」
私は、持っていたクッキーをアンジェラの口の中にほりこんだ。
頬を両手ではさんで幸せそうにモゴモゴしているアンジェラ。
「よっぽど腹減ってたんだな……」
ウィルは呆れ気味にうちの子を見て微笑んでいた。
「おばさん、早々に売り切れてよかったわ!美味しかったもの!」
「そういってもらえると、作ったかいがあったね!今年の春の分もそろそろ収穫
だからね。楽しみにしておいて!」
そういって、おばさんは、店の片付けを始めるのであった。
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