・第33話 告白
文字の残骸が光を放ち、やがてそれは空全体を包み込んでいく・・・。
破かれていったページが再び組み合わされ、繋がり、融合する。
白い光は球状に変わるとアンズの元に漂ってくる。
生命のあたたかさが込められたその光を浴びると、アンズの意識がゆっくりと戻ってくる。
「・・・く、何よ。この光」
守り神はその眩さに目を開けていられないようだ。
白い球がアンズに何かを呼びかけている。
そして光がアンズの身体を通って、胸の中に入り込む。
「これは、何?」
アンズは自分の手や足の先までがあたたか口なるのを感じ取る。白い光はアンズの身体の中でまだ輝き続けている。
『アンズちゃん、聞こえる?』
優しい、女性の声が身体の中から響いてくる。
『私は、ハル。この地球と、マキちゃんを守るためにここに伝言を残しておきます』
ハル・・・アンズは思い出した。アスカの寮にいた女性だ。緑の髪色をした、穏やかでふわふわした人だった。
『全ての始まりは私と、弟のコトから始まった』
今のアンズには、コトがハルの弟だったことを驚いている余裕はなかった。
『弟は、生まれつき呪われていた。かつて人間達がこの街をつくる為に切り開いた森の木々達から』
コトは、子供の頃から得体の知れない何かに怯えて生きてきた。まるで憑き物がついている様な異常な怖がり方をしていた。二人は孤児院で虐げられて育った。
ハルは、コトの髪色に少しずつ緑が増えていくのに気づいていた。
元々は自分と同じ真っ白だったのに。
ある日、見かねたハルは、神に祈った。この世のいろんな神や生き物に弟を助けてほしいと縋った。もちろん二人を助けてくれる者なんて存在しなかった。
しかし、この街で一番の大木だけは、ハルの祈りを聞き届け、森に呼び出した。丁度、大木のあるこの場所へ。
真夜中、ハルがこの場所にたどり着くと、声だけが降ってきた。
ハルが身代わりになるのなら、コトは助けられる。
木の声がハルにそう告げた。
それは木とハルの契約だった。
そしてコトは恐怖から解放され、契約はハルの身体を蝕み始める。
ハルは、木の計画を聞かされていた。
ケダモノという眷属を生み出し、人間達を滅ぼす。人間のものとなってしまったこの星を消してしまう。
そして、そのケダモノは人間の身体を変化させて創りだす。
魂だけを奪い取って空っぽの状態にするのだ。
元々人間だったものが、人間を滅ぼすだなんて笑えるだろう。
木は、ハルにそう笑った。
次にハルが聞かされたのは、最初にケダモノにする人間を誰にするか。
候補に上がったのは、ハルの大切な人だった。
「・・・どうして、アスカを」
木の声はハルを怯えさせようとしたのだろうか、核心的なことはわからない。
ただ、木の声は、アスカが最適な人物なのだと言う。
ハルには、それだけは我慢ならなかった。
「私はあなたの言うことはなんでも聞いてきたし、協力もしてきた。だけど、その人は、やめて」
そして木は、ハルに疑念を抱く様になる。口答えをしたことで、ハルは後に用済みとして消されることになる。
アスカは最初のケダモノにはならなかった。
そしてその代わりに、マキが選ばれてしまったのだ。
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