・第31話 魔法とは呪い
「マ、マキ・・・」
「・・・あら?」
蔦が動くと、マキの身体も動く。
黒い髪にも白い手足にも、どす黒い蔦が絡みついている。服という概念が消え、その奇しくも圧倒的な美しさを連想させる姿は、まるで、女王のようだった。
「あなたは、確か、マキ様の御友人だったかしら」
マキは蔦を指で弄びながら、微笑みかける。龍が消えた後の白い灰が、巻き起こった旋風と共に宙に周り出した。
アンズの視界がぼやける。
「ちょっと待ってね。今マキ様に聞いてみるから。マキ様、この子、アンズって子ですよね?・・・やっぱり、そうなのね」
マキ(?)は、ぶつぶつと独り言を呟いている。
不意にその黒髪が不自然なほど伸びてきてアンズの頬の擦り傷を拭った。
「あなたを殺しちゃうと、流石のマキ様も気づいてしまうから、今はやめておいてあげましょう」
マキ(?)はお婆さんに向き直った。
「さ、あなたも消えなさい。もう用はないわ」
お婆さんの色素が更に薄くなっていく。彼女は最後にマキ(?)の顔をじっと見つめた。
「復讐は復讐しか生まんぞ」
そして、お婆さんの姿は完全にこの世から消えてしまった。
アンズは目をごしごし擦った。擦っても、マキ(?)は消えない。
これは現実だ。
「あなたは、マキじゃないの?」
アンズは、マキ(?)に恐々と尋ねる。
「この大きな木の意識と、マキ様の魂が融合した存在。そう言うのが一番わかりやすいわね。ああ、この身体は、マキ様のものじゃないわ。元々私には実態がないの。マキ様の魂が使われたから、私の姿はマキ様そっくりになったと言うだけよ」
大きな木、マキ(?)の後ろに聳える大木のことだ。
「マキ様はね、この馬鹿げた星を守るために、そしてあなたを守るために、契約を結んだの。マキ様の魂を木にくれる代わりに、木はこの星を滅ぼさないってね」
蔦が動きだした。
マキ(?)が近づいてくる。
「お可哀想に、マキ様は初めから負けていたの。最初のケダモノの魂と木の怨念が融合すれば私を呼び出すことができると言うことを知らなかったの」
アンズは逃げまいとマキ(?)を睨みつける。一歩たりとも引いてはならない。
そして二人の距離は、目と鼻の先まで近くなる。マキ(?)が顔を近づけてアンズの瞳を覗き込んでくる。まるでアンズの中の恐怖の糸を引き摺り出そうとしているように。
「私を教えてあげましょうか」
マキ(?)はアンズの耳に囁き、その肩を自身の鋭い爪でガシッと掴んだ。アンズが痛みに悲鳴をあげる。
森の守り神
アンズは確かにその言葉を拾った。
「あんたを守ろうとしてマキ様は騙された」
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