第10話 再会


治安維持協会に入り、エレベーターで15階までつれて行かれた私は、そこで治安維持協会の会長と名乗る男性に挨拶をされた。中肉中背の、物腰の柔らかそうな人だった。


「・・・会長、お願いします」

兄が会長に小さな声で何かを頼んだ声が聞こえた。

「ああ、見てもらうよ」

会長が微笑んだ。その後何かいったみたいだったけど、うまく聞き取れなかった。 それよりもマキのことが心配だったから、気にせずに会長が操作する画面を見つめていた。

レバーを上げると同時に、画面上の景色もどんどん高くなっていく。

それは民家もマンションも高層ビルの高さも優に通り越した。

そして、真っ黒な空だけが残った。

「君があの未確認生物の世話をしていたという情報があってね。これから、その姿を確認してもらいたいんだ。その後は・・・いろんな質問に答えて欲しい」

緊張感を紛らわせたくて、私は問いかけた。

「あの、まだニュースとかにはなってないんですか?」

「ああ、なっていない」

会長は私の方を見た。目の下にクマができている。さっきは気づかなかったけれど。

「ただ、未確認生物目撃情報はちらちらと各地で出回っているんだ。マスコミがメディアに出すのは時間の問題だろう。もうすでに色々と嗅ぎ回っているらしいからね」

だからこの人は焦っているのか。

未確認生物が発見されたが、それを治安維持協会がすでに取り押さえたのであれば、メディアに出る時に人々に与えるショックを抑えられる。

『そんなことがあったのか、でももう大丈夫だ。治安維持協会が自分たちを救ってくれた』と人々は思うことだろう。


会長はもう五分ほどレバーを操作している。

マキは大丈夫だろうか。無事だろうか。

心配と、もう元のマキがどこにもいないんじゃないかという恐怖に苛まれる。

私のことも何もかも忘れて、本当のケダモノになってしまったの?でも、どうして。

白く濁った思考が、ぐるぐると巡る。何か見つけたくて手を伸ばすのに、なんにも掴めない虚しい思いがした。

「…いた」

 その時、会長が小さく声を上げた。

私は思わずぐっと身を乗り出し、兄に後ろから肩を掴まれた。

画面の中で、何か黒いものが塔の暗がりでうずくまっている。それは辛そうに息を荒げながらも、真っ赤な目で私たちを睨んでいた。

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