第37話
さて、後はトリカブトの槍の行方ね。
「それとトロルのゼニスキーさん」
「な、なんだゼニか?」
「オルデラーンド神殿の映像であなたがトリカブトの槍を持っていることは確認できました。今持っているのですか? 持っていなければ家宅捜査をオーク警察の方々に頼みます」
「う、売ってしまったからもう無いゼニ」
「持っていることを認めましたね? このサンマリの事件の犯人はあなたである可能性が上がりました」
「あいや! ではオーク警察の方々に今から家宅捜査を頼むのである」
「ま、待ってくれゼニ! 家の引き出しの隣に置いてあるゼニ。持っていることも認めますゼニ」
「それでは念のためにトロルのゼニスキーさんの家に交番として勤務しているオーク警察の方に聖石で連絡を取って調べますドラ」
裁判はサンマリの町殺害事件は順調に進んでいるわね。
あたしは依頼人を有罪にして負けるけど、真実に辿り着くなら大したことじゃないわ。
結果が出るまで待つか。
検事席と弁護士席の面々が静かに沈黙している中で視聴席がざわざわと騒いでいた。
※
「検査終わったっす!」
ペンタゴン刑事が戻って来た。
裁判再開ね。
「ワイズマンさんと犬の解剖と検査を行った結果。両方とも毒が体内にあったっす!」
「あいや! それでは……」
パンプキン所長が言い終わる前にあたしは発言した。
「それはトリカブトの槍の毒ですね?」
「そうなるっす! 同じ毒であり、トリカブトの槍の毒だと考えられるっす。それと……」
「それと? なんですか?」
ペンタゴン刑事の続きが気になり質問した。
「サンマリの町のオーク警察の調べでトリカブトの槍が見つかり、同じ毒だということが魔法使いによる検査で分かったっす!」
ま、魔法で分かったですって!
なんか魔法って本当に便利ね。
あたしの世界に魔法使いがいたら科学捜査いらないじゃない。
あっ!
デニス最高局長が話してくれた魔法使いの青山素子さんがいたっけ。
彼女どんな裁判してたのやら、謎のままね。
とりあえずそのことは置いておいて……今やっている裁判に集中しなきゃ!
裁判だけど検査でトロルのゼニスキーが犯人ということはほぼ確定したわね。
「トロルのゼニスキーさん、あなたがサンマリの事件の犯人です」
「そ、そんな! 違うゼニ! 無罪にしてくれと言ったゼニ!」
「これだけの証拠があります。リーフ殺害事件をやはりあなたが恨んでいた。そして交換殺人をしたということです」
「嘘だゼニイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!! 有罪! 有罪! 有罪! 有罪! そんなことがっ……かふっ!」
トロルのゼニスキーは叫びながら泡を噴いて気絶した。
「トロルのゼニスキー殿が気絶しましたドラが、これは罪を認めたということですかドラ?」
「もちろんです。死亡推定時間と犯行時間も後で確認すれば確定です」
「わかりましたドラ。自白剤を使ってトロルのゼニスキー殿から事件の細かい内容を聞きますドラ」
「サンマリの事件が終わった以上、わたしの検事としての仕事は終わりですね」
そう言って今まで黙っていたエルフの耳の二十代くらいの検事が裁判所から出ようとしていた。
誰だっけ?
っていうか自己紹介すらしないまま裁判進めてたわね。
マナー悪いのは未熟なあたしのせいね。
とりあえす名前を聞いてみるか。
「あの……失礼ですがあなたは?」
「サンマリの町の殺人事件を担当していた検事のエルフのオーヴァンズです。パンプキン弁護士あなたもこの裁判所にいる理由がないでしょう?」
「あいや! 吾輩は同じパンプキン弁護法律事務所に所属している奈々子殿の裁判を見届けるつもりである」
「そうですか、ではわたしだけ裁判所を出ます。ドラゴ裁判官、わたしはもう何も出来ないので裁判所を出ても良いでしょうか?」
「許可しますドラ」
「それでは失礼しました」
そう言ってエルフのオーヴァンズさんは去っていった。
許可があるとはいえ勝手に帰っていったわね。
普通検事や弁護士は裁判が終わるまでいるもんなのに……異世界変わっているわね。
そしてオーク警察のゴン蔵さん以外の二人が気絶したトロルのゼニスキーを担架で運んだ。
さて、残る殺人事件は一つ!
交換殺人の犯人として確定しつつある甲冑男のゴンさんね!
「あいや! 菜々子殿ここからが本番であるな!」
「ええ、ツムラー検事相手にどこまで出来るかじゃなく真実をあたしの正義で見つけ出すだけです!」
「それでは甲冑男のゴンさん。証言台まで移動お願いしますドラ」
ドラゴ裁判官がそう言うと被告人席にいた甲冑男のゴンさんが震えながらゆっくりと考え事をするように証言台に移動した。
甲冑のせいで表情は見れないけど焦っているわね。
交換殺人のオードリの町の犯人は甲冑男のゴンさんに違いないわ!
※
「では被告人の甲冑男のゴンさん。自己紹介と職業を言ってくださいドラ」
「ああ、俺は甲冑男のゴン・ジャハだ。職業はワイズマンさんの家で清掃や調理係などをしている」
「あのちょっといいですか?」
「奈々子弁護士、なんですかドラ」
「甲冑まみれで表情が見れないのです。裁判に問題が出そうな気もします。よければゴンさん、頭部を脱いでくれませんか?」
「仕方ねえなぁ、しんどいけど脱ぐよ」
兜を脱いだ時にそのゴンさんの顔に電撃が走った。
「あ、あんたは……」
「あいや! 菜々子殿どうしたのであるか?」
こいつだったのか!
「忘れやしない。あんたの顔は覚えているわ!」
「ナナホゥ……どうした? 甲冑男のゴンさんの素顔を見てから様子が変だぞ? クールになれ」
あの顔を見て、冷静になんかなれるわけがない!
なぜなら……こいつは!
「あんたはあたしの母さんを車でひき殺した銀行強盗団のリーダーで逃走中で行方不明になった三菱有三ね!」
あたしは怒りの感情を表に出して叫んだ。
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