第31話
ゾン太郎さんが言うようにこの死体は異世界裁判で検事をしていたアンジュの死体だった。
落ち着け、奈々子。
驚いてばかりもいられないわ。
落ち着いて今はこの殺人現場を冷静に調べなくてはいけない。
あたしは冷や汗をかきながら、スライム立体ビデオカメラでアンジュの死体とその周りのものを撮影した。
「な、奈々子さん。今からオーク警察に連絡とるゾン」
ゾン太郎さんがそう言って聖石に浮かびあがった紋章を押して耳に聖石を近づけた。
「な、奈々子さん。連絡終わったゾン。僕に出来ることとかありますかゾン?」
アンジュが剣を抜いていたみたいで剣に血がついていた。
「ゾン太郎さん。血液採取とかできる?」
「死体のですかゾン?」
「ええ、アンジュの剣とアンジュから流れている血が別の人かもしれないから採取お願い」
「分かったゾン。こういうこともあるかと思って色々持ってきたゾン」
ゾン太郎さんはそう言って血液を採取する小さな注射器と試験管を二つずつ取り出した。
「じゃあ、それでまずアンジュの剣に付いている血を採取して、あたしはそれを撮影するから」
アンジュの剣に付着した血液を注射器で採取するゾン太郎さんをあたしは録画した。
「これでいいですかゾン?」
「ええ、大丈夫よ。あとはアンジュの心臓から流れる血液を採取して」
「わ、分かりましたゾン」
このアンジュの剣は抵抗して犯人に傷を負わせたに違いない。
「終わりましたゾン」
「ありがとう重要な証拠品になるわ」
さて、他にも証拠品があるかもしれないし、探して見るか。
「奈々子さん! ここ! ここ! ここが怪しいゾン!」
ゾン太郎さんはアンジュの死体から少し離れたところに手を激しくブラブラさせながら足を屈伸している。
ゾン太郎さんの足元をみると一枚の布を見つけた。
「布? その布に何かあるの?」
「布から変な匂いがするゾン!」
変な匂い?
あたしはスライム立体ビデオカメラで撮影しながら布を拾った。
布には液体のようなものが塗られていて、嗅いでみると甘い匂いがした。
「これは睡眠薬ねっ!」
「もしかしてアンジュさんはこの睡眠薬の入った布で背後から眠らされて殺されたんじゃないですかゾン?」
「ただ、アンジュが抵抗して剣を抜いて犯人に傷を負わせたって説が有力だわ」
曲がりなりにも騎士だったのね。
そう思っていると空中からワイバーンの群れが地上に降りてきた。
「ゾン太郎さんあれは?」
「ワイバーンタクシーですゾン」
「ワイバーンタクシー?」
何それ?
ワイバーンが人とか運んでいるのかしら?
「ワイバーンタクシーは主にオーク警察や刑事さんが使う乗り物ですゾン。市民でも使えるのですが価格が高いゾン」
なるほど。
オーク警察に電話しても馬車で移動してたら現場に来るのが遅くなるもんね。
なら馬車より早いワイバーンに乗った方が便利なわけね。
ダヤンの廃墟の入り口の前に何匹ものワイバーンが降りてきてオーク警察がやってきた。
※
オーク警察のオーク達が現場の光景を写真などを撮って、死体をワイバーンで運んだりして一時間が経った。
やがてアンジュの死体があった場所は黄色いテープでマークされていた。
「ドウモ ナナコサン」
オーク警察の中にオークのゴン蔵がいた。
「あ、どうもゴン蔵さん。この事件の裁判っていつになりますか?」
「ソレハ……」
「ちょっと待つっす!」
「えっ?」
後ろから大声が響いた。
振り返ってみると緑色のコートを羽織った二足歩行の160センチほどの身長の狐がいた。
「裁判はまだまだ先っす!」
「ええと……どちら様ですか?」
「拙者はオーク警察の刑事を担当している狐のペンタゴン・ハリード刑事っす!」
オーク警察の刑事……か。
てっきり刑事もオークがしていると思ったけど、そうじゃないのね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます