第27話
そんなあたしの思考停止を気にせずに、ゾン太郎さんは手を激しくブラブラさせながら足を屈伸して話す。
「囲碁は五年前に六法全書を宝石で交換した時に、奈々子さんの世界の弁護士さんがルールブックと一緒に囲碁のセットを魔法法律所の重役の人に渡したんだゾン」
「……渡したんですね。なるほど、それで?」
「そして囲碁セットとルールブックがブラックホールに送られたゾン」
魔法使いの青山素子じゃなく弁護士さんが原因だったのね。
「では囲碁のセットやルールブックはその弁護士さんが家から送られたんですか?」
「ええ、魔法法律所の重役の使うブラックホールは基本的に奈々子さんの世界のどの場所にも作られるので、ブラックホールの発生場所を弁護士さんの実家の位置に設定して行き来して六法全書と一緒に貰ったんですゾン」
どうやら魔法法律所のブラックホールは固定されているのではなく、基本的にどこでも発生させることが出来るのか。
「なるほど。それで囲碁が広まったんですね?」
「ええ、今でも人気のあるテーブルゲームですゾン。雑貨屋に行けばどの町でもルールブックと一緒に囲碁のセットが売られてますゾン」
囲碁のセットというと碁盤や碁石とかか。
「囲碁の大会もテレビ中継であるし、奈々子さんの世界の囲碁のプロが集まって対局する棋院やみんなで楽しめる碁会所とかもあるゾン」
「ふむふむ」
テレビや冷蔵庫も同じように送られて工場などでそれらが作られたのかも?
それだと六法全書以外にもあたしの世界の道具とか家電製品が輸入されてもおかしくないわね。
輸入のこと聞いて見るか。
「それじゃあテレビや冷蔵庫などの家電製品はあたしの世界から送られたんですか?」
「ええ、十八年前にブラックホールに入った魔法法律所の重役魔法使いが電気店で冷蔵庫やテレビなどの設計図をコピーして映像化する魔法を使って、それをベースに冷蔵庫などが開発されたゾン」
どうやらあたしの世界の文化がこの異世界で伝わっているようだ。
それなら車が無いのがおかしい。
「あの、それじゃあ車は何故無いんですか? 馬車より便利だと思うのですが」
「車はガソリンがマナでは出来ないので作れないんですゾン」
「なるほど、魔法使いでもないのに詳しいんですね」
「新聞とか本に書かれていますゾン。僕のはそれ得た知識ですゾン」
「パソコンはあるんですか?」
「いえ、それがパソコンのプログラムとかがマナや魔法ではどうにもならなくて作れないですゾン」
「そういえば昨日の裁判所には明かりを灯す火みたいな、えーと……モンスター?」
「火の聖霊ウィル・オ・ウィスプですゾン」
「そう! それ! なんで電灯とかも作れそうなのに裁判所には天井に火の精霊ウィル・オ・ウィスプがいるんですか?」
「裁判所や神殿などは僕のいる世界だと神聖な場所なので電灯を使うことは法律で固く禁じられているゾン。なぜならこの場所だけは文明が発達しても当時のままにしていようと言う王様の決まりでそうなっているゾン」
つまり電灯は作れる時代だが、神聖な場所では昔に明かり代わりに使っていた火の精霊ウィル・オ・ウィスプを使い続けているというわけね。
「それともう一つ疑問があるのですが」
「何ですゾン?」
これは今裁判のことを思い出して浮かんだ疑問だった。
「王様がいるのは分かりましたが、ドラゴ裁判官の人魔大戦の話で魔王もいるのでどっちが偉いとか政治とかどうなっているんですか?」
「魔王はモンスター代表で血筋で選ばれて、主に軍事面や他の大陸の外交やそれぞれの城の代表以外の王たちと国際問題に関して会議をして生活している人やモンスター達の税金の配分などの政治をしているゾン」
「王様は?」
「王様は人類代表で人間が王の城の中から人やモンスターにどの王が王様代表になるかで選挙で選び、選ばれた王様は三年間法律や内政や治安維持などの政治をするゾン」
「で、どっちが偉いんですか?」
「人魔大戦後に一番偉いのはとりあえず代表の王様ということにして、次に偉い魔王は王様不在の選挙などの期間のみ一番偉い立場に変わり、王様の政治もやってくれるゾン」
つまり選挙で三年間だけ魔王より偉い代表の王様が魔王と一緒に政治をしていて、魔王は三年後に新しい代表の王様が決まるまで一番偉くなるのね。
結構ややこしい政治しているのね。
っていうか魔王の方が政治とか人間の王様の代表が決まらない間とかあるから大変そうね。
確かドラゴ裁判官の話だと人魔大戦って人間側が不利になって和平交渉を申し出て、魔王ププリスが人間とモンスターのお互いの共存を約束したのよね?
だったら魔王が偉くなるべきなんじゃないかしら?
でもゾン太郎さんの話からするに魔王は不動で二番目に偉かったり、期間限定で一番偉くなるシステムだから良いポジションか。
「なるほどね。説明ありがとうございます。納得したわ」
「いえいえ……あっ! フローレさん戻って来ましたゾン」
あたしがゾン太郎さんに色々質問している間にフローレさんが手に聖石を持ってやってきた。
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