第24話
「では、外出しますね」
「あいや! 夕方までには帰ってほしいのである」
「わかりました」
そう言い終えると、あたしは木製のドアを開けて外に出た。
※
「よし、このサイズでちょうどいいわね」
あたしは服屋のカーテンで閉められた試着室の前でセーラー服を脱いで女性会社員のスーツを着て鏡を見た。
下着やパジャマもすでにカートに買い物かごに入れてある。
町の服屋はパンプキン弁護法律事務所のちょっと離れたところにあり、噴水のある町の中心にあるレストランの隣にあった。
ゾン太郎さんの町案内は服屋でまずスーツを着てからじっくり回ろうと言う話になった。
服屋の店員さんに無料で貰った紙袋にセーラー服を入れて、寝る時用のパジャマとゾン太郎さんに見せないように配慮して下着をこっそりも買い物かごに入れた。
「奈々子さん、パジャマとスーツのサイズ合っていますかゾン?」
「ええ、大丈夫。スーツのまま出るから店員にパジャマとスーツの料金払ってもらえるかしら?」
「わかりましたゾン」
「じゃあ、今試着室から出るわ」
カーテンを開けるとゾン太郎さんが手を激しくブラブラさせながら足を大きく屈伸していた。
「おおっ! やり手の弁護士っぽくってカッコいいですゾン!」
「そ、そう? ありがとう」
弁護士バッチがあれば完璧だけど、まだ候補生なのが悲しいわね。
アンジュとの裁判でプロの弁護士に近づけたから弁護士バッチゲットってわけにもいかないか。
あーあ、早くお父さんのような凄い一流の弁護士になりたいもんね。
「それじゃあ、服や下着の料金は今払ったので奈々子さん用の聖石を神殿に行って貰いに行くゾン」
「えっ? 聖石なんてそんな長くてもたった一か月だし、遠出もしないから大丈夫よ」
「一か月だけでも何かあったら大変ですゾン。その時に連絡できないと不便だゾン」
やれやれ、パンプキン所長と同じでゾン太郎さんも心配性ね。
まぁ、ここにいる間は貰っておくか。
ついでに神殿も興味があるしね。
それにパンプキン所長からもらったスライム立体ビデオカメラを神殿でゾン太郎さんに教わって試しに速攻で使ってみるか。
たぶん容量とかあるからデータを消すときはゾン太郎さんに聞けばやり方分かるだろう。
「ゾン太郎さん、神殿に行くのはいいけど、このスライム立体ビデオカメラの使い方教えてくれない?」
「奈々子さんがぶら下げていたから気になっていたけど、パンプキン所長に借りてきたんですかゾン?」
「ええ、色々物騒だからって理由でね。歩きながら説明できる?」
「簡単な機能だから神殿に行く途中でも十分教えられますゾン」
「そう、それじゃ。頼むわ」
「じゃあ、服屋出るゾン」
そう言ってゾン太郎さんとあたしは服屋を出て神殿に向かった。
「お買い上げありがとうございました」
最後まで親切に服を説明してくれたエルフの耳が付いている店員の声を後ろで聞いて、服屋のドアを閉めた。
「それじゃあ、スライム立体ビデオカメラ説明しますから神殿まで歩きましょうゾン」
「ええ、説明終わったら、試しに神殿で使ってみたいしね」
※
ゾン太郎さんのスライム立体ビデオカメラの説明が予想より早く終わって、人気のない神殿にたどり着いた。
神殿の入り口の前には大きな人型の石像が左右にふたつあった。
その石造を見ていると石像がジロリとあたしを見た。
「うわっ!」
「どうしたんですゾン?」
「石像があたしを見たわ!」
「ああ、警備のゴーレムさんですゾン」
「ゴ、ゴーレム?」
モ、モンスターだったのか。
ビックリしたわ。
「神殿は政府から生活費を全ての人やモンスターの税金の一部で援助されている以外に、ゴーレムを派遣していて二十四時間警備しているゾン」
「二十四時間? お腹とか減らないの?」
「ゴーレムは無欲で食べ物を与えなくても長生き出来るゾン。活動するのは夜中に神殿に不法侵入者が出ないように警備している時くらいでずゾン」
「昼とかに武器を持った人やモンスターが来たらどうするの?」
「武器を持っているだけではゴーレムも通してしまうゾン。過去に神殿で殺人事件は起きたことが無いからゴーレムも政府も心配せずに通してしまうゾン」
「そうなんだ」
今後起きたらどうするのよ?
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