第20話

 さっきまで考えていたことが結局解決できないからあたしは今悩んでいる。


 しかし今日のこの異世界裁判で弁護したあたしはゾン太郎さんから見れば良い弁護士だと認められるだけの結果を出した。


 なぜどこが良かったのか言葉には出来ないが、今日終わった異世界裁判の結果が本当に正しく良い弁護士の道の第一歩なのだろうか?




「もう寝ていると思いますけど、おやすみなさいですゾン」




 そう言った後にしばらくしてゾン太郎さんがグースカ寝始めた。


 ゾン太郎さんの言った言葉が頭に残る。


 命と弁護士。


 その二つの言葉だ。


 命とか良い弁護士とか色々考えたけど、今はまだ分からない。


 でもならなきゃいけない。


 失った命を少しでも救う良い弁護士、か……。


 今日の異世界裁判がそれに近い結果を見せてくれた。


 だったら、悩んでいても仕方ない。


 一歩一歩進んでいる!


 そうよ!


 前に進まないと疑問も解けない。


 ならば良い弁護士になるにはあたしなりに考えてならなきゃいけないわっ!


 他の誰のためでもなく、あたし自身の為にね!


 本当に良い一流の弁護士になるにはどうすればなれるか?


 それはきっと哲学的なものに近いかもしれないけど、弁護士としての永遠のテーマだわ。




「ありがとうゾン太郎さん、あたし命を少しでも救える弁護士を目指すわ。おやすみなさい」




 ゾン太郎さんは既に寝ているが、そう呟いた。


 そのままあたしはゾン太郎さんに続いて眠った。







「奈々子さん、起きて下さいゾン」




「んー、あと三十秒眠らせて」




「そんなの今起きるのと同じだゾン! 今すぐに起きて下さいゾン!」




「ん? んんっ! 着いたの?」




 寝ていた体を起こし、毛布をたたむ。


 朝日がまぶしいわね。




「三十秒寝なくても生命活動は大丈夫ですゾン」




「えっ? あたしそんなこと言ってた?」




「さっき言ってたゾン」




 あー、ちょっと寝ぼけてたみたいね。




「あたしを起こすってことはもう着いたの?」




「はい、今の時間はちょうど朝の九時ですゾン。パンプキン弁護法律事務所の前に着きましたゾン」




 おそらくリュックサックから取り出した時計で時間を見て、ゾン太郎さんはあたしにそう言ったのだろう。


 それなら間違いないわね。


 まだ、眠いけど辛抱するか。


 どうやらパンプキン弁護法律事務所にあたしが起きたら辿り着いていようだ。


 ゾン太郎さんのことだから着いても少しだけあたしを寝かせてくれたのだろう。


 馬車のおじいさんが困り始めたから仕方なくあたしを起こしたと思える。


 じゃあ、馬車のおじいさんに失礼だし、気を遣ってくれたゾン太郎さんの優しさに免じてすぐに降りるか。


 馬車から降りて、最初に目に映ったのは二階建てのレンガで出来た建物でその中で浮いている木製のドアに黄色い文字でパンプキン弁護法律事務所っと書いてあった。


 ここがパンプキン弁護法律事務所か。




「それじゃあ、パンプキン弁護法律事務所前に着いたからここでお別れだね」




 馬車のおじいさんがそう言ってゾン太郎さんと握手した。




「ありがとうですゾン」




「じゃあの」




 馬車のおじいさんが馬車から降りたあたしたちにそう言って、そのまま馬車で移動して去って行った。


 ああ、馬車のおじいさんにお礼言い忘れたわ。


 っていうか、あたし結構寝てたのね。

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