第8話

 考えても口に出さなければ沈黙と同じだわ!


 そう、ゾン太郎さんの無罪のためにも真実を追求しなくちゃ!


 イザエモンさんには他にも話が進んだらまた証言台に呼んで聞くこともある。


 ここは被告人席にイザエモンさんを座らせて、ゾン太郎さんに証言台に来てもらって事件の内容をもっと聞く必要があるわね。


 よし!


 やってみるか!




「ドラゴ裁判官。コナカ博物館の館長のコナカ・イザエモンさんを被告人席に座らせて下さい」




「分かりました。許可しますドラ」




「んー、もしかして私疑われているのかーい? 冗談きついねー」




「小娘。何を考えている?」




「最後になれば分かりますよ。それにまだ証拠が不十分です。ゾン太郎さんに話の続きを聞いて館長や関係者などに矛盾がないか、それが重要です。つまり犯人かどうか決めるのはこれからってことです」




「何を言うか! 犯人はそこのゾンビのゾン太郎殿で間違いないのだ!」




「それは違います! ドラゴ裁判官。ゾン太郎さんを再び証言台に呼んでください」




「小娘! 今までの証言で無罪になる理由がないではないか! 嘘をついたな!」






「だからと言ってゾン太郎さんを有罪にする理由もありません!」




「二人とも静かにして下さい、静かにして下さいにドラ」




 ドラゴ裁判官が木づちを叩いてざわざわしていた視聴席の連中も静まり返る。


 アンジュ相手にちょっと熱くなり過ぎたわね。




「ではゾン太郎さんの証言に戻りますドラ。五分後の休憩で証言台にゾン太郎さんを呼びますドラ」




 こんなことで自称天才のアンジュ騎士検事なんかと言い争っても仕方ないわ。


 まだ、誰が犯人か分からないが、怪しい人物はかなり増えている。


 写真を撮ったイザエモンさんと関係者や、日雇いの魔法使いのエリスさん。


 内部で起きた事件であるかもしれない。


 それは盗まれた棍棒の写真と確認をした人物に絞られるからだ。


 それと大事なところを見落としている。


 いつ棍棒が盗まれたのかゾン太郎さんが気づいたのかだ。


 いずれにせよ、少しずつ真実に近づいている。


 かなり遠回りだけど。


 必ず真犯人を見つけ出して、ゾン太郎さんの無罪を勝ち取るわよ!


 あたしの正義と真実がそう言っている。


 そう『あの日起きた事件』からあたしの中では犯罪者を裁くためにあたしの正義と真実は変わらない。


 いつだってそうだった。


 今はあの事件を考えていてもしょうがない。


 ゾン太郎さんの証言の続きを聞かなくては。







 裁判所では重苦しい空気が流れていた。


 その中で天井の火の精霊ウィル・オ・ウィスプの笑い声が聞こえた。


 五分後にゾンビのゾン太郎さんが激しく手をブラブラさせながら足を大きく屈伸して証言台に立った。




「ではゾン太郎さん。証言の続きをお願いしますドラ」




「は、はいだゾン」




 さて、どんな証言が出るか……しっかり聞かないとね!




「馬車で棍棒を運んでいたら魔法使いのエリスさんが来たんだゾン」




 それはさっきも聞いたわね。




「そしてゾンビの棍棒輸送会社の方ですね。本所から馬車に爆発物が仕組まれていると聞き緊急でやってきました。本部からこの馬車に爆破物がつまれているという情報がありました。中を調べさせて下さいっと言ったゾン」




 本所?


 本所はおそらくコナカ博物館のことか。


 それで魔法使いのエリスさんは馬車の中を調査した。


 なるほど、確認のために聞いておくか。




「ゾン太郎さん。魔法使いのエリスさんは確かにそう言ったんですか?」




「は、はい。その通りです。覚えていますゾン」




「わかりました。証言を続けて下さい」




「は、はいですゾン」




 また緊張したのかいつもより早めにゾン太郎さんは手を激しくブラブラさせながら足を屈伸していた。


 ゾン太郎さんはその状態で証言を続けた。




「しばらく魔法使いのエリスさんが場所の中に入っていると馬車の中から煙が出てきたんだゾン」




 煙?


 爆破物なのに煙が出た?




「それで爆発するかと思って避難したんだゾン」




 ここでゾン太郎さんが避難か。


 疑われているのはその避難かもしれないわね。


 そこを探ってみた方が良いかしら。


 よし!


 まずは爆破物について聞いて見るか。




「イザエモンさん。馬車には爆破物は入っていたんですか?」




 それは違う気もしたが聞いてみることにした。


 被告人席のイザエモンさんは立ち上がってあたしの方に視線を向ける。




「んー。スライムカメラで撮った画像に収められているのが荷物の全てさ。爆破物は積んでいないよ」




 そう言われてオーク警察のゴン蔵さんがあたしに渡した証拠の写真を見たが、確かに棍棒以外は何も入っていなかった。




「で、でも馬車から煙が出ていたんだゾン! だから聖石でコナカ博物館の館長のイザエモンさんに連絡を取ろうとしたんだゾン!」




「んー。でもその時は私は博物館にいなかったし、聖石は館長室に置いたままだったからね。つまり連絡が取れなったんだよ。んー、オーケイ?」




 ゾン太郎さんとイザエモンさんの話を聞くに爆破物は無いようだ。


 この二人が共犯という可能性もほぼないだろう。

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