第5話
視聴席が騒ぎ出した。
「おいおい、まーた始まったぜ。アンジュのオークは女騎士を犯そうとする不浄な存在だとかいう昔の古臭い意見が」
「そもそもオークが近づくと『くっ、殺せ!』とか言い出したりするしな。アンジュは女騎士関係の古い変な本とかに影響され過ぎだよな?」
「まったくその通りだぜ。オークは警察官が多いのにな」
ざわざわと騒ぐ中でアンジュが剣をオークに向ける。
「さあ! あと十三秒だぞ。オーク! このアンジュの騎士道精神にも怒りの限度があるのだ! 時間を過ぎると絶対に許さないぞ!」
何言い出すのよ、この騎士検事。
あと十三秒とかずいぶん短気な騎士道精神ね
オーク警察のゴン蔵さんがそんなアンジュのいる検事席に早歩きで証拠品を送った。
「ドーゾ」
「むっ! 今私に何か酷いことをする目をしているな? 汚されるくらいなら死を選ぶ! くっ、殺せ!」
なんでそうなるのよ?
っていうか死んだら裁判どころじゃないでしょ?
オークのゴン蔵さん困っているじゃない。
「テーブル 二 ショウコヒン オイテオキマスネ」
そう言ってオーク警察のゴン蔵さんはテーブルに証拠の写真を置いて、さっさと持ち場に戻っていった。
やれやれ証拠一つにこれじゃあ先が思いやられるわね。
なんであんなポンコツが検事なんてしているか理解に苦しむわね。
おっと、頭切り替えないと!
証拠の写真を見る。
確かにゾン太郎さんの言うように三日前の午前八時ということが分かる日時が書かれた証明書だ。
この世界ではあたしのいる世界と変わらなく日時は同じものだった。
二十四時間で明日になるし、毎月二月だけ二十八日で他の月は三十日から三十一日で月が替わるし、月は十二月までで一年となっている。
あたしのいる世界と何の変わりもない日時だった。
だが、曜日という概念はないようだ。
この世界の人達は何月の何日という曜日を省いた言い方をおそらくするのだろう。
それはさておき。
もう少しゾン太郎さんに聞いて見るか。
「ゾン太郎さん、いつも八時に馬車に荷物を積んでいたりするんですか?」
「ち、違いますゾン。この日は運ぶ時間が毎回九時でしたが、事件のあった日は一時間早かったですゾン。元々コナカ博物館から大きなバンエイ博物館に荷物などを移動する時はだいたい九時時でしたゾン」
なるほどね。
何故一時間早かったのだろう?
聞いて見るか。
「ゾン太郎さん。何故その日は一時間早かったんですか?」
ゾン太郎さんは私の方に振り向いた。
「バンエイ博物館の館長が別の博物館から九時に大荷物が届くので八時にしてほしいと聖石で言われたからだゾン」
聖石?
知らない単語が出たわね。
ゾン太郎さんにとりあえず聞いて見るか。
「聖石って何ですか?」
「小娘。そんなことも知らないのか。この天才騎士検事のアンジュが教えてやろう」
いやいや……あなたには聞いてないんだけど……。
まっ、いっか。
「ではアンジュ騎士検事さん。その聖石とは何ですか?」
「よく聞け小娘。一回しか言わないぞ。もう一回言ってくれと言っても言わないからな」
はいはいはいはい。
早く言いなさいよね。
「聖石は遠くにいる相手同士が持っていると連絡が取れる神が作った石だ。石に紋章があって、相手の持っている聖石の紋章を入力すればその聖石で話が出来る」
なるほど、遠くで連絡が出来るってわけね。
スマートフォンみたいなものかな?
「この世界ではみんな一つは聖石を持っている。そして聖石は神殿で無償で貰える」
なるほど神が作ったのだから神殿に配布されているのね。
っていうか神様実在するんだ。
まあ、それはひとまず置いておくか。
「一人一個で二個以上所有するのは禁止になっている。もしした場合は懲役5年だ」
手違いだけで五年と考えると物騒ね。
「以上だ。小娘。理解出来たか?」
「ええ、どうも騎士検事さん」
「違う! そうじゃない! アンジュ騎士検事と呼ぶのだ!」
「はいはいはいはい。どうもアンジュ騎士検事さん」
「ぬぅん! イラっと来る返事だな」
怒っているアンジュは無視して聖石について記憶しておくか。
いわゆる電話みたいなものが聖石で博物館に送る棍棒はその日は八時に変更されたのね。
原因は他の博物館の荷物が九時から来るということで一時間ずらしたのね。
これは覚えておこう。
何か大事な気がする。
無意味な情報かもしれないが、スルーするわけにもいかないしね。
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