4.革命軍とエンジゾル盗賊団
ガンッ、ガンッ、バキッ!!
ドアを足蹴にした激しい音が聞こえる。
昨日、演説する幼女の前にいた盗賊団がボクたち革命軍のドアを蹴破ってきた。
「おら!!金目のもの出せや!!」
ものすごい形相でボクたちの部屋に入ってくる。
「ったく。相手間違えてねぇか?俺たち革命軍にカネなんてねぇぞ」
「うるせぇ!!」
ボクたちが何を言っても、ただひたすらに声を荒げて武器を振り回してきた。
こうしてボクたちはそれぞれ、
・ボクvsエンジゾルさん
・ドッカーニさんvsロブさん
・オーギャストさんvsフィッチさん
という形で対決することになった。
「さてよぉ。覚悟はいいだろうなぁ。俺は出来てる」
そんなぁ~。覚悟って言われても、こっちは転生したばっかりなのに。
「待てや、おらぁ!!」
ボクは必死で逃げ出した。
「待てと言われて待つ人なんて居ない!!」
ぼくはすがるように走り続ける。教科書に載ってた、あのメロスみたいに。
僕が通っていたのは進学校だったから、他の学校の子供達より早くに走れメロスを知っていた。
「くそっ。ちょこまかと逃げやがりやがって!!」
走っても走っても追いかけてくる。…あ。そうだ!!
ボクはかばんの中から食べかけのいちじくを取り出した。
「えいっ!!」
エンジゾルさんの足元にいちじくを投げつけた。
ぐにゅっ。エンジゾルさんは、いちじくを踏みつけた勢いで足を滑らせた。
「うぉっ!!」
エンジゾルさんは体を後ろのめりに傾けた。
ガツンッ!! 鎧が床にぶつかる音と一緒に、頭を打った音が聞こえた。痛そぅ~。
少しの間、エンジゾルさんは横なりになって体を痙攣させていた。気絶しているようだった。
むくっ。エンジゾルさんは体を起き上がらせた。頭を擦りながらすごい顔でボクを睨みつける。
「くそっ。てめぇ!やりやがったな!!もう許さねぇ!!」
殺る気満々にボクを睨みつけた。
「ひぃぃぃ!!」
僕はそれからも、必死に逃げ続けた。
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ボクたちの戦いを横目に、ドゥッガーニさんはロブさんと対決していた。
ロブさんが、ハンマーを振り回してドゥッガーニさんに襲いかかる。巨大なハンマーは、ルツェルン・ハンマーというらしい。
「おいおい。そんな武器なんざ使ってんじゃねぇぞ」
ドゥッガーニさんは余裕の声でロブさんの攻撃をものともせずに避け続けた。
「0点だな。武器の特性がまるでわかっちゃいねぇ。ハンマーってのはなぁ…」
そう言って武器の柄の間合いに詰め寄る。
「こうやって簡単に無効化できるんだよっ!!」
ぐいっ。そう言ってロブさんから武器を奪い取り、柄の部分をへし折った。
「さあ武器はねぇぞ。これからどうするつもりだ」
「言うまでもねぇよ!! こうするんだよっ!!」
がしっ!! ドゥッガーニさんとロブさんは組手をしていた。
「うおっ!!」
あのドゥッガーニさんが、力比べで押されている。
「やるなっ!!力比べで互角なのは初めてだ!!」
「互角だと? 今お前は俺に押されているんだよ!!」
腕をお互いにつかみ合う。肉を掴んだ音がミシミシと聞こえるほどに。
「どらっ!」
「うぉぉぉぉぉ!!」
「おい! なんでおめぇはこんなに力強いのに、あんな逃げっぱなしのやつに付き従ってるんだ?」
「あいつから教わったんだよ。俺たち革命軍は『市民を守る盾であれ』、とな」
「なんだそりゃ」
「だからこそ、今、中を腐敗させている『教皇連中』やオメェらみてぇな盗賊とかに示してやんなきゃならねぇんだ。『内輪もめしてる場合じゃねぇ!』ってな。近隣のホーランドみてえに力を合わせなきゃならねぇんだ。国を発展させるためにはなぁ」
「よくわかんねぇなぁ。カネは俺らのもんだろうって」
「だーかーらー。そういう身勝手な考えをやめろっつってんだよ!!いい加減に、しや、がれーっ!!」
ドゥッガーニさんが力を入れ、思い切りロブさんをぶん投げた。
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一方、オーギャストさんは、フィッチさんと戦っていた。
フィッチさんは蜂を無限に操って攻撃をしていた。
「御身に群がる虫たちよ 結集改に正強集い 羽の音色で総てを圧せよ」
フィッチさんは詠唱を唱える。
「さぁ行きなさい。秘技 三・密蜂!!」
ブゥゥゥゥゥゥゥン
蜂の大群がけたたましい羽音を鳴らしながら攻め寄ってくる。
「あらあら。勢いがすごいですね。でも…」
ふわっ。勢いよく飛んできた蜜蜂が包む。
「その程度、避けるのは造作もないことですよ」
オーギャストさんは、蜂の大群をすんでのところで避けた。
「そんな動きにくそうな服でよくもまぁ」
「昨日までは喪服だったのですけどね。残念ですわね」
「喪服?」
「えぇ。私の愛猫の」
「なぁにそれ。猫に喪服って馬っ鹿じゃないかしら」
呆れたようにフィッチさんはオーギャストさんに言い放つ。
「……そうやってアナタは何もかもを使い捨てしてきたのでしょうねぇ。虫も人も」
少し怒ったような声で語りかける。
「冗談よ。アタシの行き先はイケメン、そしてハイビスカスってところかしらね」
「ハイビスカス???」
「『繊細な美』や『新しい恋』、『艶美』『華やか』そして『輝き』よ。輝きなくして女じゃないもの」
そう言ってフィッチさんはうっとりとした表情で話を続ける。
「それこそ単なる自分勝手。こんなこと、他の人が許すわけ無いわ」
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逃げ続けていたボクだったが、体力は限界。もうこうするしかないと、エンジゾルさんの剣を持っている手首を掴んだ。
「やっと諦めた、ってか?」
「じゃないよ。こうするんだよ!!」
そういってボクは手首をエンジゾルさんの体の方に押し付けた。
「あいたたたたたっ!!」
エンジゾルさんの手首をぎりぎりとひねった。すると、エンジゾルさんは、ガチャンと、持っていた剣を落とした。
はじめてだけどやればできるもんなんだなぁ。
「くそぉぉぉぉ!!!」
エンジゾルさんはがむしゃらに腕を上下左右に振り回し、ボクを振り払おうとした。
うっ。支えるのが辛くなってきた。
ギリギリギリ……。
腕がしびれてきた。
その瞬間、ボクの肩を叩く手があった。
「俺も手伝うぜ」
そう言ってドゥッガーニさんがボクとエンジゾルさんとの戦いに割って入った。
もうついたのか! はやい! きた!メイン盾きた! これで勝つる!
「なん……だと……」
エンジゾルさんがびっくりした表情でドゥッガーニさんを見つめた。
「ろ、ロブはどこに行った!?」
エンジゾルさんは押さえつけられながらも叫んだ。そういえば……あのおっかない見た目の人はどこに行ったんだろう?
「あ。あいつか?そこで伸びてるぜ」
そう言ってエンジゾルさんと反対方向に顔を振った。
そこには気絶して動かなくなったロブさんが居た。
「く、くそぉ……」
そう言うと、エンジゾルさんの身体から力が抜けるように力みがなくなった。諦めてくれたみたいだ。
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ところ変わってオーギャストさんとフィッチさん。
「さて。これで3vs1になりましたがこの後どうなさいます?」
そういってオーギャストさんがフィッチさんに問いかけた。
「そうねぇ。流石に分が悪すぎるわ。今日はもうおしまい。この盗賊団ももうおしまいね」
ため息まじりにフィッチさんが。
「随分あっさりと身を引くんですねぇ」
「流石に、あたしの価値じゃ、捕まったコイツラとつるんでもカネになりゃしないし。金払いが良かったから付き合ってあげたけどさぁ」
「ならなぜ一緒になって盗賊団なんかに?」
「別に理由なんて無いわ。ほかの仕事を探すのが面倒くさかったからだけなのよねぇ」
「そうですか」
「じゃあ、この際ご縁ですから、革命軍さんに…」
発言を遮るようにオーギャストさんがぴしゃりと言い放つ。
「駄目です。そもそも貴方のように人を使い捨てするような人を雇う理由はありません」
にこやかに、しかしきっぱりと断った。
「冗談よ。アイツラ以上にカネなさそうだし。じゃ、またどっかで会う機会があったらよろしくね」
そう言って、フィッチさんが風のように消えた。
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「また、面白いことをやっているな」
ボクたちの戦いを遠目から眺めていた教皇様が、ボクたちの建物に近づいてきた。
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