第35話 中央都市アースガルド
予想より早く各種族の交流が進んでいたため、アースは急遽思案していた都市の建設に着手する事にした。まずは三人の代表が揃ってから都市について説明するとしよう。
街道を通していた事もあってか、三人の代表は数時間後にはアースの家に到着していた。アースは三人をリビングに通し、これから建設する都市についての説明を始めた。
「あ~、まずは急に呼び出して悪かった」
「いいわよ。それで、何かあったのかしら?」
ルルシュの問い掛けにアースが応える。
「うん、実は……」
アースは三人に各種族の交流が思っていたよりも早く、また問題もなかった事から本格的に各種族が一緒に暮らせる街をここに作ると説明した。
「各種族が垣根なく一緒に暮らせる街か。……良いではないか。我もそう望んでいた」
「そうね。エルフも危険がないなら来ると思うわ。まぁ、これまでの取引でないとは思ってるけど」
「妾も賛成なのじゃ! だが一つ問題があるぞ?」
「問題?」
アースの問い掛けにリリスが応える。
「問題はこの家じゃ」
「この家? 何で?」
「わからぬか。この家は街の中心部になるのじゃろ? それに……各種族が集まるとなれば妾らもここに住み、何かあった場合にすぐ動けるようにせねばならぬ。まぁ、妾の部屋はアースと同じ部屋でも良いが……」
「「良いわけないでしょ!?」」
フランとルルシュが盛大にツッコミを入れていた。
「ま、まぁまぁ。それで?」
「うむ。じゃからな、ここは一つこの家をもっと大きくしよう。そうじゃな、城なんか建てたら良いのではないか?」
「城かぁ~……」
リリスの案にガラオンが賛同した。
「ふむ。主には立派な屋敷に住んでもらいたいからな、城は良いと思うぞ」
「さすが獣王! よくわかっておる! の、アース。街の前にまず城を建てようではないか。それから……」
リリスは新しい街について自分の考えを話した。リリスの考えはわかりやすく、アースが考えていた街並みとよく似ていた。
「うん、店や居住区をまとめるのには賛成かな。中々考えてるじゃないかリリス」
「ま、まぁの。分散していたらどこに何があるか探さなくてはならぬからな」
「ああ、私からも良いかしら?」
「なにかな?」
次にルルシュが希望を述べた。
「私としては街に緑が欲しいかなって。そうねぇ……皆がゆっくり休めるような感じが良いわね」
「なるほどなるほど。歩いてばかりじゃ疲れるからね。その案も取り入れよう」
「ふふっ、ありがとう」
「ならば我からも一つ」
ルルシュに続きガラオンも希望を述べる。
「我らは常に訓練を重ねているのだがな、もし可能なら街にそういった訓練ができる場所が欲しいのだ」
「訓練かぁ~。ならいっそ闘技場でも作ろうかな。年に一回最強決定戦みたいなイベントを開催しても良いかも」
「「「それは面白そうだ!」」」
「もちろん俺も参加……」
「「「それはダメだ!」」」
全員に却下されてしまった。ついでに兄さんたちの参加もだ。ハブられてるようで辛い。
こうして様々な意見を交え、新しい街の構想がまとまった。
「よし、こんなもんかな」
アースが図面を完成させると、ルルシュが手を上げ質問した。
「ねぇ、街に名前はないの?」
「名前? あ、なるほど」
名前の事をすっかり忘れていた。
「アースの街なんじゃからアースなんたらで良いのではないか?」
「う~む……。アース……ジェット?」
「却下!」
ガラオンは開口一番却下され凹んだ。
「そうねぇ……。アース……ドラゴン?」
「そのままじゃないか……」
ルルシュも今一ネーミングセンスに欠けていた。悩むアースにフランが問い掛ける。
「アースさんはなにかありません?」
「俺? そうだなぁ……」
アースは前世の記憶からなにか良い案がないかと頭を悩ませる。
「思い浮かぶのはアースガルドくらいかなぁ。これは戦争の神が住んでいた国の名前なんだけど……」
その案に三人が手を叩いた。
「良いじゃない、アースガルド。私は気に入ったわ!」
「うむ。我も異論ないぞ。しかしまた戦争の神とはな。人間と争おうと言う意志が籠っていて良いな!」
「神の国か! 妾もそれが良い! さすがはアースじゃな!」
三人の賛同を得て、街の名前はアースガルドと決まった。代表はアース。その補佐にルルシュ、リリス、ガラオンが就く。フランはアースの秘書官となった。
「よし、じゃあ街の名前も決まった事だし、三人は自分の町に戻り移住者を募って欲しい。あ、でも魔族と獣人は海側の監視のためにある程度人数を残して欲しいな」
「うむ。では早速町に戻り移住者を募ろう」
「妾もじゃ」
「私のとこは全員移っても大丈夫?」
「そうだね。海側の森に迷いの結界を張ってあれば大丈夫かな」
「わかったわ」
話が纏まり、アースが三人に期間を告げた。
「じゃあ移住開始は半年後くらいで。それまでに城と街を作っておくよ」
「「「了解」」」
こうして、アースの国造りは最終段階へと進んだ。
アースは家を作業場にし、まず瓦を焼く。
「アースさん、それは?」
「これは瓦っていってね、屋根になる部分なんだよ」
「へぇ~」
アースの頭には城と言ったら日本の城しか浮かんでこなかった。そしてこれから作る城は江戸城。これは長く平和な時代になれば良いなと、徳川さんから威を借りようと思ったからだ。
「ふぅ……。ジオラマ作ったりしてたから構造は完璧。あとはひたすら組み上げるだけだ! よ~し、やったるぞっ!」
アースは一分の一スケールの城造りに燃えるのであった。
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