第3話


日の出前。灯りも持たず早足で歩く男。

また自分に知らせず行動する主への怒りで手に力が入り、危うく小瓶を握り潰すところだった。気を付けなければ足音も大きくなってしまう。そろそろ料理番が起き出す頃だが、こんな雑音で起こすのは申し訳ない。


半刻程前の事。

小用を足しに起き上がると、窓枠に見覚えのある使いが止まっていた。何事かと窓を開け使いを手に乗せると、嗅ぎ慣れた森の香りが鼻をかすめ男は悟る。

主の窓枠ではなく自分の窓枠へ帰らせるあたり、憎たらしいったらない。

朝食を済ませた後に嫌味を含めて報告すれば良いか…とベッドに腰掛けたが、主の顔が過り考え直した。


寝たら起こしに来るに違いない。


男はさっさと身支度を整え、主の部屋へ向かう事にした。こうした男の行動も、主にとっては予想の範囲内なのだろう。そんなに早く知りたいなら、己の窓枠へ帰らせてやればいいのだ。が、この主。男の迷惑そうな顔を見るのが楽しいらしく、ケタケタと下品に笑うだけで謝罪など一切しない。


主の部屋の前。怒りを鎮める為の深呼吸をしてみるが無意味だった。

3回扉を叩く。


「入るぞナバラ。」


主ナバラはケタケタと下品に笑い


「おはようルアン」


と爽やかに実に楽しそうに迎える。


「……全く、なんて一日の始まり方だ」





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